夢……夢の中の世界では何でも出来る。
 現実では出来ない事も、この世界では出来る。
 そう。夢の中だけは…………

 始まります。


 夢を見ました。
 夢の中で私は世界で一番愛おしいあの人を自分の世界だけに置いていました。
 他の誰にも見せたく無い。他の誰にも触れさせたく無い。
 その歪んだ愛情で彼女を縛っていた。
 誰も知らない私だけが知っている部屋に鎖で拘束された彼女がいる。
 鎖で拘束されているというのに、彼女はまったく怒っている感じはなく、むしろ喜んでいる表情をしている。
 実際彼女がそんな事をされたら物凄い勢いで怒るのだろうけど、ここは私の夢の世界だ。
 だから、そんな事はあり得ない。
「アリサちゃん……」
 夢の中の世界だから、現実では無いから私は貪るように彼女を求める。
 此処には理性も道徳も無い。在るのは彼女を求める感情だけ。
「アリサちゃん。好き……大好きなの……」
 現実の世界で一番言いたい言葉。だけどそれを言う事が出来ない。
  だって、私は彼女に愛される資格なんて無いんだから。
 こんな夢の中とはいえ、好き放題彼女を犯し尽くしている私なんて……
 だから夢の中だけでも彼女を求める。
 歪な愛情表現しか出来ない私を癒して欲しいから。
 それでも一つだけ言わせて下さい。
「私は――」
 月村すずかは――
「アリサちゃんの事を愛しています」
 その言葉を聞いたあなたは、優しく微笑んでくれる。
 それだけで、心が温かくなる。
 それが、夢の中の話だとしても――
 私はそれが嬉しい。
 たとえ、現実の世界でそう言ってもらえないとしても、今この瞬間だけは……  

 現実だと思いたい。
 夢ではなく、現実の世界だと――


「ん……」
 ああ……もうすぐ目が覚める。
 この夢の世界も終わりを迎える。
 彼女の温もりも彼女の言葉も笑顔も全てが消え去る。
 きっと、目が覚めたらこの夢の事も忘れてしまうのだろう。でも――
 あなたを愛しているのだけは忘れない。
 この感情は夢ではなく、現実の物だから。

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