ニヤニヤと何かを企んでいるような顔。
 この顔をしている時のはやてちゃんは、ほんと碌なことをしない。
 かなりの確立でわたしが恥ずかしい思いをして、それを見てケラケラと笑うはやてちゃん。
 そんな光景が鮮明に浮かんでしまうから、はやてちゃんのニヤけた笑みはいい予感がしない。
 そして今、はやてちゃんはその笑みを浮かべながらわたしのことを見ている。
 はぁ……今回は一体、何を考えているのやら。

 始まります。


「な〜のはちゃんっ♪」
「な、何かな。はやてちゃん」
「にしし〜♪」
 あぁ……物凄い笑顔だ。満面の笑み。楽しくて堪らないといった表情だ。
 そしてわたしの視界に入っている一つの紙袋。あの中には何が入っているのだろう?
 この流れからして、アレをわたしに渡して何かをしようとしているのは想像出来る。
 しかも、はやてちゃんのことだからエッチな衣装だったりするんだよね?
「なぁ、なのはちゃん。今は夏やんか」
「そ、そうだね。夏だね」
 嫌になるくらいに暑い日々。子供の頃は夏は楽しかったけど、大人になるとそうでもない。
 ほんとに、ただただ暑い。そんな感じだ。
「夏といえばなんやと思う?」
「……夏休み?」
 夏といえば夏休み。これがあるから子供の時は夏が楽しかったんだと思う。
 まぁ、夏休みの宿題とかは嫌だったけど……それでも楽しかった思い出がある。
「そう! 夏休み! そして夏休みといえば夏祭りや!」
 ババン! とまるで効果音でもつきそうな勢いで大きな声を出している。
 ほんと、はやてちゃんはどんな時でも元気だね。
「夏祭りと言ってもそんなのに参加をする時間的余裕がないのは分かってる」
 時間を取ることは出来ないこともないけど、はやてちゃんと一緒の時間を合わせるのは難しい。
 恐らくわたしとはやてちゃんは一緒には夏祭りには参加出来ないだろう。
「そこで……」
 待ってましたと言わんばかりに紙袋の中をゴソゴソと漁っている。
 一体、何が出てくるのかな? 変なモノじゃないといいんだけど……
「なのはちゃんのために浴衣を持ってきましたー♪」
「え……浴衣?」
「そっ♪ 浴衣や」
 ヒラヒラと浴衣を見せ付けてくるはやてちゃん。
 可愛らしい浴衣でそれ自体は悪くはないけど、何で浴衣? 夏祭りに参加出来ないからって何で浴衣を用意する必要があるの?
「まぁ、私がなのはちゃんの浴衣姿を見たいだけなんやけどな♪」
「……なるほど」
 それだけのために変な前置きをして浴衣を出してきたんだね。
「浴衣を着るぐらいなら別にいいけど……」
 うん、着るだけなら何の問題もない。
「あ、勿論分かってると思うけど下着はつけたらあかんよ」
「はぃ?」
 今、何か不穏な言葉が聞こえた気がする。わたしの聞き間違いかな? ううん。聞き間違いであって欲しいな。
「浴衣は古来から素肌に羽織るモノ! 下着をつけるなんて邪道以外の何物でもないんや!」
 握りこぶしを作って力説してるはやてちゃん。
 えっと、その……本当に下着をつけずに浴衣を着ないといけないのかな?
「大丈夫やって。ここには私となのはちゃんしかおらんのやから」
 確かに、ここにはわたしとはやてちゃんしかいない。
「それにただ着てもらうだけやって。変なことは一切せん」
「ほんと……?」
「ほんと」
「……じゃあ、一応信じるけど」
 はやてちゃんの言葉を信じて浴衣に着替えに行く。
「別に私の前で着替えてくれても――」
「嫌♪」
 笑顔で拒否をして部屋を移動する。
 わたしとはやてちゃんは互いの裸を見ている仲だけど、それでも目の前で着替えるのは恥ずかしいもんね。
 どうせ何もしないっていうのは嘘なんだろうけど、それでも浴衣に着替える。
 分かっているのにお願いを聞いてあげる。
 何だかんだ言って、わたしははやてちゃんに甘いね。

「――えっと、どう……かな?」
 はやてちゃんに言われた通り下着をつけずに浴衣を着ている。
 下着を穿いていないというのがこんなにもムズムズとするなんて知らなかった。
「ええよ。凄くええよなのはちゃん♪」
 はぁ、はぁ。と息を荒げながらはやてちゃんが手をわきわきとさせている。
「ぐふっ♪ ぐふふふっ」
 あ、やっぱりだ。やっぱり何か――ううん、エッチなことをするつもりだ。
 そしてわたしはそれを期待してたのかな?
「なのはちゃん覚悟〜♪」
「んにゃぁあっ!?」
 興奮したはやてちゃんがそのままわたしへと襲い掛かってくる。
 やっぱり碌なことにはならなかった。
 だけど、わたしは何度でもはやてちゃんの要望に応えちゃうんだろうなぁ。
 心の何処かでこうなることを望んでいるから……

 だから企んでいるのはわたしも一緒なの。

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