「ヴィヴィオ〜っ♪」
「うひゃっ!? な、なのはママ何!?」
「もぉー。どうして逃げるの?」
「いや、あの、えっと……」
 なのはママが満面の笑みを浮かべながら私に抱き付いてこようとしている。
 少しお酒に酔っているような気もするけど……気のせい、かな?
 でも、スキンシップが普段よりも過剰になってきてるような気がするんだよね。
 普段からもある程度のスキンシップはあるけど、やっぱり今日は過剰だと思うの。
「ヴィヴィオはわたしのこと、嫌い?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ――」
「お、落ち着いて! お願いだから落ち着いて! なのはママ」
 ちょっと隙を見せると抱き付いてこようとしてくる。
 これはもう、気がするレベルじゃないよね? 確実になのはママはお酒に酔ってる。
 どうしよう。この状態のなのはママの相手をするのは厳しいと思うけど……

 始まります。


「ふぇ……ヴィヴィオが意地悪をするぅ〜。昔は素直だったのにぃ〜」
「わ、私は昔も今も素直だから!」
「じゃあ、何でわたしから逃げるの?」
「それは……って、だから落ち着いてよ! なのはママ」
 なのはママの手を振り解きながら落ち着かせようと声をかける。
「もぉ〜わたしは落ち着いてるもん。ヴィヴィオが意地悪をしてるだけだもんっ」
「うぐ……っ」
 妙に可愛く拗ねるなのはママ。
 普段の凛々しい感じのママしか知らない人が見たら意外に思うかもしれないけど、実は普通に可愛らしい人だったりするんだよね。
 凛々しいけど可愛い。そして自慢のママ。なんだけど……
「ヴィヴィオ〜」
「もぉー! 私からしたら、なのはママの方が意地悪だよ……っ」
 凄く自慢のママだけど、今日のママは勘弁して欲しいかな。
 お酒に酔ってない、普段の優しくて素敵ななのはママに戻って欲しいんだけど。
「…………」
「な、何……?」
 満面の笑みから一転、急に真剣な顔になる。
 どうしたんだろ? 何かあったのかな? もしかしてさっきの私の言葉で怒ったのかな?
「あ、あの――」
「ヴィヴィオ」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
「肩の所にゴミがついてるよ」
「え? 何処に……?」
「わたしが取ってあげる」
「あ、うん」
 ゆっくりとなのはママが近づいて、肩についているらしいゴミを……って、ちょっと待って。
 本当にゴミがついてるのかな。この言葉ってもしかして嘘なんじゃ……
 そして嘘を吐いて、私に抱き付こうと――
「なのはママ! 自分で取るから――あうっ!?」
「にゅふふ〜♪ ヴィヴィオだ〜♪ ヴィヴィオの身体温かいね〜♪」
「や、やっぱり抱き付かれたっ!?」
 ゴミなんか関係なく普通に抱き付いてきた!
 私に抱き付いて嬉しそうな顔をしてるよ! しかも、お酒臭い。間違いなくお酒に酔ってるよ!
「ぎゅ〜っ」
「く、苦しいってば!」
「ヴィヴィオのいい匂いがする……くんくん」
「ちょ――止め、恥ずかしいから、匂いを嗅ぐなんて止めてよ!」
「止めない。もっと匂いを嗅いじゃうから」
「あ……や、んぁ……はぅっ、やぁぁ……んぅぁ」
 首筋に顔を近づけて、何度も何度もクンクンと匂いを嗅いでくるなのはママ。
 恥かしさとくすぐったさがあって、困る。非常に困る。
 こんなことをずっと続けられちゃったら変になってしまう。
 どんどん変な気分になって、ダメになってしまう。
 だから――
「お願いだから止め……っ」
「ヴィヴィオ、大好きだよっ♪」
「あうぅぅ……」
 止めて欲しいのに。お酒の匂いもアレだし、抱き付いてくるのは困るのに。
 だけど……だけど――
「なのはママのばかぁ……」
「んふ〜」
 何を言っても、私を離してはくれないみたい。
 もういいや。今のなのはママに何を言ってもきっと無駄だよね。
 だって、お酒に酔ってるし変に甘えてきてるし、だから何を言っても無駄なんだと思う。
 そう。私一人が我慢をすればいい。なのはママの誘惑に耐えていればいい。
「……大丈夫かな?」
「ん? 何か言った?」
「……何も言ってないよ、なのはママ」
「そう? それじゃあ、ヴィヴィオもわたしを抱き締めて〜」
「……はいはい」
 なのはママの我儘に付き合うように抱き締める。
 お酒の匂いと一緒に、ほんの少し甘い香りがするけど我慢。
 なのはママの酔いが醒めるまで念仏でも唱えながら我慢をすればいいんだ。

 頑張れ。頑張れ私。
 本当に辛いし、厳しいけど本気で頑張れっ!
 お酒となのはママに負けるな!

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