久しぶりに夢を見た。
 しかしその夢は私にとって嬉しくない結末の夢だった。
 これが夢でよかったと思うと同時に、現実になってしまう事への不安を覚えた。
 

 始まります。


『シグナムさん聞いて下さい。わたし結婚する事になりました』
『だ、誰と結婚をするんだ?!』
『えへへっ♪ この人です――』
『な―――――っ!?』

「……さ………さん」
 誰かが私を呼んでいるような気がする。
「……さん。シグナムさん」
「……うっ……ここは」
「大丈夫ですか? シグナムさん」
「なの……は?」
 何でなのはが私の目の前で心配そうな表情をしているのだろうか?
「物凄くうなされていましたけど、悪い夢でも見たんですか?」
「悪い夢…………」
 確かに今のは悪い夢なのかもしれない。なのはが誰かと結婚をするなんて……
 いや、なのはもいずれは結婚をするのだろうが、その相手は私であってほしいと思っていたから。
 別になのはと結婚の約束をしたわけではないのだから、他の人間と結婚をすることもあるだろう。
 そういう意味で考えれば、やはり悪い夢なのだろう。
「確かに悪い夢を見ていたようだが、心配するような事ではない」
「そうですか?」
「ああ、なのはが心配するような事じゃないんだ」
 そう……なのはが心配する事では……
「でも、シグナムさん辛そうな顔してますよ」
「それは――」
「どんな夢を見たのか分かりませんが、もし辛いのでしたらわたしに話してもらえませんか?
聞いたところで何も出来ないかもしれませんが、それで少しは気持ちが楽になるかもしれませんし」
「いや、しかし――」
 夢の中の話をするのはかなり恥ずかしい。しかも、その内容がなのは絡みの話で、私はただ漠然と
不安と焦りを感じたというのが余計に恥ずかしい。
「シグナムさん……」
「…………」
 はぁ……なのはのその表情は実にズルイ。そんな表情をされて黙っている事なんて出来るはずがない。
「……実は――」

「ふふ……そんな事で不安を感じていたんですか?」
「ぅ……」
 なのはにとっては、そんな事でも私にとってはかなり重要な事なのだ。
「わたしがシグナムさん以外の人と結婚するなんて事はないのに……」
「なのは……」
「好きな人や大切な人はたくさんいますけど、一番大切な人はシグナムさんですよ」
 なんという事だろうか。なのはの今の言葉で先ほどの不安や焦りが一瞬にしてなくなってしまった。
 たった一言でこんなに安心するなんて……
「私は本当に弱いな」
 弱くて、情けないほどに脆い。
「わたしはシグナムさんが弱いとは思いませんけど、そんな可愛らしいシグナムさんも好きですよ」
「――――――っ!?」
「にゃははっ♪ 本当に可愛いですよシグナムさん」
 うぅ……私はなのはに、からかわれているのだろうか?
「からかってなんていませんよ。わたしは本当にシグナムさんの事を愛してますし、可愛いとも思ってますよ。
だから夢の事なんて気にしないで下さい」
「…………」
「もし夢の事が気になるのでしたら、わたしに言って下さい。わたしが夢ではなく現実の愛を教えてあげますから♪」
 ああ……私はなのはにこんなにも想われているんだ。
 こんなにも想われているなんて、これこそ夢なんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
「なのは」
「はい。何ですか? シグナムさん」
「私は――」

 悪い夢を見た。
 その夢は本当に最悪で、思い出すだけでも心が締め付けられる。
 だが私は挫けない。 
 だって、なのはが私を愛してくれているから。
 夢ではなく、現実で――

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