大好きな人と結ばれ幸せを噛みしめている私に訪れた悪夢。
 彼女と付き合うようになってから見始めた夢。
 彼女が私から離れて何処かに消える光景。
 そんな夢ばかり見てしまう。
 私は何処かで焦りを感じているのかもしれない。
 彼女が……なのはさんが私の前から消えてしまうかもしれないという可能性に。
 そして、私は大変な嘘を彼女に吐いているから、後ろめたさがあるからなのかもしれない。

 始まります。


「ねぇ、ティアナ。最近元気が無いみたいだけど大丈夫?」
 最近なのはさんはよくこの言葉を口にする。
 それ程までに私は元気が無いように見えるのだろうか?
 だけど、なのはさんにあの夢の事を知られるわけにはいかない。
 だから私はお決まりの台詞を言う。
「大丈夫ですよ、なのはさん。私は到って元気ですよ」
 心配かけさせまいと同じ言葉を言う。
「でも……」
 しかし、なのはさんは折れてはくれない。
 私を心配してくれるのは嬉しいし、元気が無いのは事実だけどそれでも私は――
「本当に……大丈夫ですから」
 私は嘘を吐く。
 大好きな人に最低の嘘を吐く。
 あなたに心配をさせたくないから。
 自身の我儘で嘘を吐き続ける。
「ティアナ……」
「すいません。なのはさん」
 逃げるようにして、なのはさんの前から消える。
 どうしてもなのはさんの顔を見ている事が出来なかった。
 あの優しさに満ちた……でも、どこか悲しげな表情を見ていられなかったから。
 私は臆病だ。
 なのはさんに少しでも悩みを打ち明ける事が出来ていたら……
 どれだけ楽になれただろう?
 どれだけ安心出来ただろう?

 今更そんな事を考えても仕方が無い。
 だって、私は隠す事を選んでしまったのだから。
 もう過去に戻る事は出来ない。
 きっと私は、なのはさんの側に居る資格は無いんだろう。
 それでも――  

 それでも醜くても足掻いてもいいのでしょうか?
 あなたに嘘を吐きながらも。
 肝心な所は隠しつつも。

 嘘のような笑顔であなたと共に。
 この心が壊れるまで居ていいですか?

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