闇の書事件で出会い戦い、友になった。
 そしてあの事故で、あたしは心に誓った。
 もう二度と彼女の悲しむ顔は見たく無いと。
 だからあたしは、そのためだったら何でもすると――

 始まるぞ。


「ちょっ、なのは――っ!」
「も〜ヴィータちゃん何を怒ってるの?」
「いや普通怒るだろ! 大体何だよ、その手に持ってるのは?」
「何って……うさぎさんの耳の形をしたヘアバンドだけど、これについて怒ってるの?」
 なのはが、意味が分からないといった感じで首を傾げている。
 まぁ、普通ならあたしだって、そんな事じゃ怒らねーよ。でもな、今まさしくそのうさ耳ヘアバンドを付けられようと
してるんだぞ。これで怒らねー奴なんていねーよ。
「な、なのは――マジで止めろよ」
「え〜何で〜? 絶対可愛いのに」
 可愛いとか関係無いから。そんな恥ずかしい物付けられるわけないだろ!
「む〜ヴィータちゃんなら絶対付けてくれると思ったのに……」
「何でそう思うんだよ?」
「だって、ヴィータちゃん優しいから」
 ぐ――っ! こ、こいつは……
「やっぱり……ダメかな?」
 なのはが眼を潤ませながら、上目づかいでお願いをしてくる。
 こんな表情でお願いされて断れるやつなんていないだろうな。それに断ってしまったら、なのははきっと悲しそうな顔を
するだろう。それだけは絶対に嫌だ。
 なのはのそんな表情だけは見たく無い。
 あの事故の時に誓った。なのはの笑顔を守るとめだったら何でもすると――
 だから……
「ヴィータちゃん……」
 だから――
「あーもう、わかったよ! 付ければいいんだろ?」
「ヴィータちゃん♪」
 負けだよ、負け。あたしの負けだよ。だって仕方無いだろ。あたしは高町なのはに惚れてしまってるんだから。
「えへへっ♪ だからヴィータちゃん大好き♪」
「う、うるせ−よ」
 なのはの満面の笑顔を受けながらうさ耳ヘアバンドを装着する。
 因みになのはの満面の笑顔を見て、鼻血が出そうになったのを必死で抑えていたのは、言うまでもないな。

「ほら、これでいいんだろ?」
「うん、うん、うん♪」
 よかった。なのはも喜んでいるみたいだな。この笑顔が無かったら、絶対こんな物身につけないだろうな。
 うさ耳の部分を触りながらそんな事を思っていると、一つ疑問が湧いて出て来た。
「おい、なのは。どうしてうさぎの耳なんだ?」
 今更な疑問だが、気になった以上聞いてみたい。
「何でって――」

「ヴィータちゃんといえば、うさぎさんだからだよ」
「あー」
 そういう事か。実になのはらしい考えだな。
「まぁ、本当はネコ耳もいいかなって考えてたんだけど、まずはうさぎさんからかなって」
「ん、そうか」
 ――って、ちょっと待て! 今なのはは何て言った?
 確か……まずは、って言ったよな? という事は、まだ先があるって事なのか?
「お、おい……なのは」
「うさぎさんヴィータちゃんも堪能したし、次はネコさんヴィータちゃんでいこうか♪」
 マジか――
「な、なのは……」
「ヴィータちゃん♪」
 わぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!


「えへへ♪ やっぱりヴィータちゃんは可愛いな♪」
「そうかよ」
 なのはは言葉では表現出来ないくらいの素晴らしい笑顔をしている。
 一方あたしは、ぐったりした表情をしている。
 あれから何個かの動物の耳の形をしたヘアバンドを付けさせられては、抱き締められてはの繰り返しだった。
 なのはの笑顔を見るのはいいし、抱き締められるのも悪くは無い。
 だけど――
 何か納得出来ないものがある。
 でもきっと、いくら納得出来なくても、なのはのあの笑顔を見たら諦めてしまうんだろうな。
 それ程までに、なのはの笑顔は眩しいから。

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