助けてくれ。
 いや、本当に助けて欲しいと思う。
 相手が倒すべき敵だったり、どうでもいい相手だったなら問題はなかった。
 だけど、今回ばかりは相手が悪い。
 どうしてもコイツには敵わない。力でどうこう出来る相手じゃない。
 強さ云々じゃない。コイツには――なのはには、あたしは抵抗することが出来ないのだ。
 だからこそ助けて欲しい。
 誰でもいいから、なのはの暴走を止めて欲しいんだ。

 始まります。


「ヴィータちゃ〜んっ♪」
「…………」
 なのはが妙に顔をニヤつかせながらあたしに近づいてきている。
 こういう時のなのはには関わらない方がいい。関わると絶対にあたしが損をする。
 損をするのは最初から分かり切っている。だから逃げないといけない。
 今すぐ、なのはから離れないといけないわけなんだが……
「ヴィータちゃんっ♪」
「お、おい……」
「にゅふふ〜♪」
「酔ってるのか?」
 酒の匂いはしないから酔ってはいないとは思うけど、反応が酔っているような感じだ。
 何を企んでいるのか、それが分からないから怖い。
「酔ってないよ? あっ、でもヴィータちゃんのこの後の反応によっては酔っちゃうかも」
「あたしのこの後の反応……?」
 何だ? 何をさせる気なんだ!?
「お部屋の掃除をしていたら少し面白いモノを見つけたんだ」
「へぇ……」
「それでね。それをヴィータちゃんにつけて欲しいなって思うの」
「あたしに……か?」
 どんなモノかは分からないけど、小物か何かなのだろうか? それともユニークアイテムか?
 まぁ、それくらいなら別につけてやってもいいかもな。
「分かったよ。つけてやるよ」
「にゃはは〜♪ 言ったね? つけるって言ったよね!?」
「お、おう……」
 なのはのテンションが妙に高くなってるが、もしかしたらあたしは選択を間違えたのか?
 だが、一度言ったことは取り戻すことは出来ない。時間を戻すことは出来ないのだ。
「ヴィータちゃんにはコレを着てもらうよ!」
「んなっ!?」
 興奮気味のなのはが取り出したのは一着の服。
 しかも普通の服ではなくて子供が――小学生くらいの子供が着るような服を取り出してきたのだ。
「言ったからにはちゃんと着てもらうからね!」
「おあっ!?」
 グイグイ、と服を押し付けてくるなのは。
 着るのか? 本当にコレを着ないといけないのか?
 いくら見た目が子供っぽいからって、こんな服を着せられるのは勘弁して欲しい。
 いや、自分で選んだ服なら気にしないけど、なのはが持ってきた服というのが問題だ。
「早く! 早く! 早く!」
 酷く急かしてくる。どれだけこの服を着たあたしを見たいと思っているのだろうか?
 つーか、これくらいのことで暴走するのは勘弁して欲しい。
 あたしがなのはに抵抗出来ないのを知っているだろ? なのに、暴走されると凄く困るんだよ。
「ヴィータちゃんが着替えないのなら、わたしが手伝ってあげようか?」
「……自分で着るから」
「ちぇー」
「……お前、年々はやてみたいになってきてないか?」
 楽しそうなのはいいけど、はやてみたいな性格になるのは止めて欲しい。
 困る。非常に困る。
 まぁ、とにかくだ。更に暴走される前に渡された服を着るとしよう。
 これを着てしまったら余計に暴走するような気がしないでもないけど、結局はどれも同じなんだろうな。
「えへ〜」
「………………」
 なのはの視線に耐えながら着替えていく。
 誰か助けて欲しい。いや、マジで助けて欲しいよ。

「これでいいんだろ?」
「うんっ♪ すっごく可愛いよヴィータちゃん!」
「ちょ――ま、待てって!」
「ヴィータちゃ〜んっ♪」
「むぐっ、んっ!?」
 あたしを抱き締めて、スリスリと頬ずりしてくる。
 もう止めることが出来ない。最初から止めることは出来なかったが、もうどうにもすることが出来ない。
 暴走を始めたなのはを止める術はあたしにはない。
 なすがままに弄られていく。
 なのはが飽きるまで色々と弄られていってしまう。

 助けて。助けてくれ。
 本当に誰か助け…………
 …………
 ……。

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