母と娘。
 例え血が繋がっていなくても、私となのはママは立派な親子だ。
 だけど最近、その立場だけじゃ満足出来なくなってきている。
 これ以上を望むのは我儘だっていうのは分かっているけど、それでもその先に行きたいと思ってしまう。
 母と娘ではなく、対等で互いを思いやる立場――恋人という間柄に。
 でも……それは我慢しないといけない感情。
 耐えて。必死に心の中に留めておかないといけない気持ちなんだ。

 始まります。


「なのはママ……なのはさん」
 私の世界で一番大切な人の名前を呟きながら想いを馳せる。
「なのはさんはきっと私のことを、娘だとしか思ってないよね?」
 写真に写っているママの頭をコツン、と突きながら愚痴を漏らす。
「ねぇ知ってる? 私ね、なのはさんのこと好きなの。娘としてじゃなくて、一人の女の子として好きなんだよ?」
 勿論、娘として母親であるなのはさんは大好きだ。
 でもそれ以上に、一人の女の子として好きになってしまっていた。
 何時からなんて分からない。だけど、本当になのはさんを愛してしまっていたの。
「言いたい。告白したい」
 なんて願望があるけど、実際に行動に移すことはないと思う。
 だって、これは私の我儘だから。
 きっとなのはさんは、望んでいないと思うから。
 単純に私のことを娘だと思っているはずだから。私の邪な感情に気づいていないと思うから。
「我慢しないとダメ……だよね?」
 私個人としては先に行きたい。
 親子以上の関係になりたい。
 もう本当に今の状態に満足出来なくなってきているんだ。
「なのは……さん」
 あぁ、ダメ。
 思っては――想ってしまうのはダメ。
 無理やり自分の心を納得させないと。満足させないと爆発してしまう。
 親子関係になれただけでも十分過ぎる程の奇跡なんだから。
 気持ちを爆発させたら、その関係も壊れてしまう。
「こんな感情。抱かなければよかったのに……」
 そうすれば、苦しむこともなかった。
「……でも、無理なんだろうなぁ」
 なのはさんに対して恋心を抱くな、というのは無理な話だ。
 あの人の無自覚な所に色々な人が堕とされていっているのを知っている。
 一度でも何かしらの繋がりを持ってしまったら、もう逃げることは出来ない。
 確実に惹かれ、想ってしまう。
 だから、私のこの気持ちは必然的なモノでどうしようもない抗えないモノなのだ。
「――って、ほんと無理やりな言い訳だね」
 うん。色々と言ってみたけど無理やり過ぎるし、物事が好転するわけでもない。
 これは単純に私個人の問題。
 耐えるのか、爆発させるのか。その二つしかないのだ。
「私が取るべき行動は分かっている。でも……」
 一番正しい行動は、耐えること。我慢をすること。
 だけど、私はいつか感情を爆発させてしまうだろう。
 勢いに任せて告白をして先に進もうとするだろう。
 仮にそれが最悪の方向に進むことになっても。
 私はなのはさんと対等の恋人同士になりたいんだ。

 だからその時までは、母と娘――この関係で我慢をしよう。
 だって、これは私の我儘なのだから。

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