『シグナムさん。わたしと勝負をしませんか?』
 なのはから突き付けられた勝負。私個人としては勝負をするのは嫌いではない。
 しかし……あまりなのはと勝負をするのは好きなではなかったりする。
 なのはと争いたくはない。そんな思いもあるのだが一番はやはり――
『シグナムさんが負けたその時は分かっていますよね?』
 これだ。満面の笑みで私を見てくるなのは。
 なのはは、勝負に勝った時は必ずと言っていいほど何かを要求してくる。
 その要求の幅は多岐に渡り――可愛らしい服を着せるだなんてことは当たり前で、恥ずかしい
台詞を言わせたり時には恥辱を私に味わわせようとまでしてくる。
 しかも何故か、こういう時のなのはは異常に強い。
 何もなに模擬戦や単純な勝負だとある程度は勝てるのだが、なのはが何かを賭けた時
だけは勝つことが出来ない。だから私はあまり勝負をしたいとは思えないのだ。
『逃げたりしないですよね……?』
 だというのに、こんな風に私を煽ってくる。夜天の騎士の将としては、こう言われて
しまっては逃げることは出来ない。将として負けることも逃げることも許されないのだから。
『はぁ……勝負すればいいんだな』
『はい♪ 勝負しましょー♪』
 今度は一体、私に何を要求してくるのだろうか? 勝ちたい。そう思っているが…………

 始まります。


「わーい♪ わたしの勝ちですね♪」
 嬉しそうに両手をあげて喜びを表現しているなのは。勿論、私は負けてしまった。
 本当にどうして、なのはに勝てないのだろうか? こればかりは謎である。
「さて、それでシグナムさん。わたしのお願いですけど」
「今度は何をさせるつもりなのだ?」
 また可愛らしい服でも着せるのか? それとも恥ずかしい台詞でも――はぁ。ほんと
最近のなのはは主はやてに似てきているような気がする。
 こういう所は似て欲しくはないのだがな。
「今回はですね……これです!」
 ポンポンと自身の膝を叩くなのは。どういうことだ?
「今回はシグナムさんに膝枕をしてあげたいなと思いまして」
「ひ、膝枕だと……!?」
 それはあれか? 私がなのはの膝の上に頭を乗せるということだよな?
 わ、私がなのはの膝の上に頭を……
「さ、シグナムさん。恥ずかしがってないで、頭を乗せてください」
「う、うぐ……っ」
「勝負に勝ったのはわたしなんですよ? 敗者は大人しく言う事を聞きましょうね」
 そう言われてしまっては従わざるを得ない。
 恥ずかしい。かなり恥ずかしいのだが、なのはの膝に頭を乗せるしかない。
 くそ……っ、やはり勝たなければいけなかったんだ。
 カチコチと身体が固まっているのを自覚しながら大人しく頭を乗せる。
「ふふ……っ♪ こういうのってなんかいいですよね♪」
「…………そうだな」
 恥ずかしいことに変わりはない。しかし、それでも何処か安心する部分がある。
「シグナムさんをこういう風に見ることはあまりないですから、新鮮ですね」
「あ、あまり私を見るな……っ!」
 きっと変な顔をしているに違いない。ニヤけているに違いないのだから。
「ほんとシグナムさんは可愛いですね♪」
「……そんなことはない」
 本当に可愛いのはなのはなのだから。なのはの方が可愛いし、綺麗だ。
 本人に言うことはないだろうが、私は心の底からそう思っている。
 ……はぁ。私はきっと幸せ者なのだろう。
 負けて嬉しいと思ってしまっている。その時点で私はただの幸せ者になっていると思う。
 昔では考えられなかった思考。
 これも全ては主はやてと、高町なのは。彼女らのおかげなのだろう。

 それでも、このように唐突な勝負は勘弁して欲しいとは思うけどな。

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