あたしの目の前にある一枚の写真。
 あたしともう一人……大好きな人が写っている写真。
 不意に腕を組まれて驚いた顔をしているあたしと、嬉しそうな顔のすずか。
 ただの写真。大抵の人にはそういう風に思うだろう。
 だけど、あたしにとっては宝物のような写真なのである。
 とても大切な大事な思い出だから……

 始まります。


「はぁ……」
 宝物である一枚の写真を見ながら深く溜息を吐く。
 この写真はあたしにとって宝物だけど、別にこの写真だけが宝物ってわけではない。
 他にも色々と写真はある。すずかと写っている写真は一つのアルバムじゃ納まらないくらいにある。
 今あたしが見ている写真は、その中でも特に思い入れが強い写真というわけだ。
 すずかに腕を組まれている写真。この写真を見ているとこの時のことを色々と思い出してしまう。
 初めてすずかに告白をした日。あたしの想いをぶちまけた日。
 泣きながらすずかに告白をして、それをすずかは受け入れてくれた。
 その後に記念として撮った写真。これを見ると、あの日のことを思い出す。
 一つ、一つを鮮明に思い出すことが出来る。
「ほんと、恥ずかしいことをしたモノだわ」
 後悔をしているわけではないけど、それでも恥ずかしいことをしたと思っている。
 まぁ、恥ずかしいことをしたおかげですずかと付き合うことが出来ているんだけどね。
「こんなのはあたしのキャラじゃないはずなんだけどね……」
 写真を見ながら思い出に浸りながら、愛おしい人を待つ。
 本当にこんなのはあたいのキャラじゃないはずなのに。

「ふふ、アリサちゃんは昔っからそんななんだったよ?」
「……すずか」
 大好きで愛おしいすずかがあたしに声をかけてきた。
「いつ帰ってきたの?」
 帰ってくるには少し早いと思うんだけど……
「ふふ、早くアリサちゃんの顔が見たくて急いで帰ってきちゃった♪」
「そう……」
 すずかの言葉に顔が赤くなっていく。
 いつまで経っても変わらない。あたしはすずかに翻弄されている。
 恋人としてあたしがすずかをリードしてあげたいのに、気がつくとすずかにリードされている。
 あたしが何か気の利いたことを言っても、すぐにすずかが恥ずかしくなってくることを言ってくる。
「すずかには勝てないのかしら?」
「ん……? 別に勝つ必要はないんじゃない?」
「そうかもしれないけど……」
 やっぱり一度くらいはイニシアチブと握りたいと思ってしまう。
 すずかを恥ずかしがらせて勝ち誇りたいって思ってしまう。
 かなり情けなくて小さいことを思っているというのは理解しているわ。だけど悔しいじゃない。
 一度くらいはすずかをリードしてみたいって思ってもいいじゃない。
 悔しいんだから!
「わたしはアリサちゃんと居るだけでいつも負けているよ? だってアリサちゃんが大好きで堪らないんだから♪」
「あ、あうぅ……」
 ま、また……まただ。またすずかに恥ずかしいことを言われてしまった。
 そしてその言葉に合わせるように顔を赤く染めてしまっている。
「アリサちゃんっ♪」
 あたしの腕に抱きついてくるすずか。
 ちょうど、目の前の写真のようにあたしの腕に抱きついてくる。
「きゃぁっ!?」
 そして、写真と同じように驚いた顔を浮かべるあたし。
 写真という思い出の中だけではなく、現実としても同じように翻弄されてしまう。
「アリサちゃん、大好きだよ♪」
「……あたしも大好きよ」
「うん♪」
 あぁ、あたしはすずかに勝つことが出来ない。
 この写真のように――そして今の状況のようにずっと、すずかに翻弄され続けるのだろう。
 だけど、それでもいいかな?
 だってあたしがすずかを好きだという気持ちに変わりはないのだから。

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