高町なのは……何故、我があのような者の世話にならぬといけないのか。
 我には、そんな者なぞ必要ないというのに……
 それなのに、あ奴ときたら――
『消えるなんて言わないで! わたしと一緒に生きようよ!』
 敗者は大人しく去るべきなのだが――何故、我を引きとめる?
 我を止めてもうぬらには何も得る物がないというのにな。
 まったく、酔狂な奴だ。
 本当にな。

 始まります。


「塵芥。起きぬか塵芥!」
 朝、時間になっても起きてこぬ高町なのはを起こしにいく。
 何故我が、こんな事をせねばならぬのか。甚だ疑問だが仕方ない。
 これもきっと敗者の末路なのだろう。
 まぁ、今はそんな事より高町なのはを起こす方が先か。

 すぅ。はぁ。

 大きく息を吸い込み――
「早く起きんか塵芥!」
 耳元で叫ぶ。
「――ひゃっ!? な、なに!?」
 驚いた高町なのはが起き上がる。
「ふん。やっと起きたか。早く準備をしろ、朝食の用意が出来ておるぞ」
「……統べ子ちゃん……?」
 視界の定まっていないような表情で我を見る高町なのは。
 まったく平和そうな顔をしおって――と、その前に一つ言っておく事があるな。
「おい塵芥。我を統べ子ちゃんと呼ぶでない」
「でも、統べ子ちゃんは、統べ子ちゃんだし……」
「ええい! だからその呼び方は止めんか」
「む〜だって、統べ子ちゃんもわたしの事塵芥って呼ぶじゃない。でも、わたしの事ちゃんと名前で
呼んでくれたらわたしも考えるよ?」
「ぐぬぬ……」
 分かった。名前で呼べばいいのだな? ちゃんと高町なのはと呼べば。
「……高町なの……は」
「うん♪ 統べ子ちゃん♪」
「んなっ!? き、貴様! 何故我の呼び方を変えないのか!」
 約束と違うではないか。
「う〜ん……だって、他にいい呼び方考え付かなかったんだもん。そ、それにこの呼び方になれちゃったし」
 にゃはは、と笑う高町なのは。
 こ、こ奴は……
「あれ? どうしたの統べ子ちゃん」
「――何でもない」
 怒るだけ無駄だろう。
 はぁ。どうしてこんな事になったのだろうな?
 きっと、我等が生まれ――こ奴等と出会ってしまったからなのだろう。  

「変な統べ子ちゃん……」
 首を傾げて我を見る高町なのは。
 こんなやり取りなぞ、意味はないはずなんだが……
 結局のところ、我自身も酔狂な奴だったということか。

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