肌に突き刺さるような冬の寒さ。
 息を吐くと、吐息が白い煙となって空へと消えていく。
 あまりの寒さに手袋をつけているというのに、手を擦り合わせてしまう。
 頬が赤くなり、身体がぶるりと震えてしまう。
「まだ、かな?」
 つい、そんなことを思ってしまう。
 まだ約束の時間にはなっていないのに。私が勝手に先に待っているだけなのに。
 我儘なことを呟いてしまっている。
 早くあの人に会いたい。
 早くあの人の顔を見たい。
 早くあの人を抱きしめたい。その温もりを感じたい。
 言葉を交わして、大好きな顔を見ていたい。その姿を視線に収め、胸に焼き付けたい。
 想うだけで――考えるだけで、胸に熱い何かが込み上げてくる。
「ふふ……っ」
 不思議と笑みが零れてしまう。
 こんな姿、他の人に見られたら絶対に変な人だと思われちゃうよね。
 でも――それでも、自然と笑みが漏れてしまう。
 会って、何をしようか。どんな言葉を交わそうか。どのように二人の時間を過ごしていこうか。
 そんなことを考えるだけで笑顔になってしまうのだ。
 間違いなく、今のわたしは恋する女の子。
 大好きな人のことを考えるだけで、ドキドキと胸を高鳴らせている。
 あの人が来るのが待ち遠しいけど、それでもこの待っている時間は嫌いじゃない。
 一緒に居る時間もとても大切で大事だけど、こうして待っている時間も重要なんだと思う。

「くちゅんっ」
 うぅ……それでも、こうして外で待つのは少しだけ辛いかも。
 待つのは嫌いじゃないし、ドキドキ、ワクワクする時間だけど季節が悪いのかな。
 だいぶ身体が冷えてきてしまっている。
 下手をすれば風邪を引いてしまうような、そんな感じだ。
 それでもわたしは、この場であの人を待つ。
 待ち合わせをしているから。会って、あの人と一緒の時間を過ごしたいから。
 寒さも、風邪も気にしてはいけない。
 あの人を想うだけで、きっと心も身体も熱くなってくるはずだから。
「な〜んて、少しだけカッコつけ過ぎたかな?」
 そんな、ちょっとバカみたいなことを一人で呟いてみる。
「そろそろ来てもいいと思うんだけど……」
「――――っ、――っ!」
「あ……っ」
 遠くから聞こえる、わたしを呼ぶ声。
 早く会いたい。早く一緒の時間を過ごしたい。
 そう思っていた人の声。何度も聞きなれている、絶対に聞き逃すことのない声。
 その声の主がわたしのことを呼んでいる。
 わたしの名前を呼びながら、一生懸命走ってきている。
 別に待ち合わせの時間に遅れたわけでもないのに、必死に走ってきている。
「ふふっ♪」
 あの人のそんな姿勢が、気遣いが堪らなく好きだったりする。
 さて、待っているだけじゃなくて、わたしの方からも近づこうかな。
 わたしからも動けば、その分だけ長い時間を過ごすことが出来るのだから。

 わたしと、あの人――大好きで大切なあの人との二人だけの時間が、今始まります。

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