過去に大きな怪我をした。
 それでも無茶をして自分を痛めつける。
 誰かのために自分を犠牲にする心は立派なのかもしれないけど……
 心配する方の身にもなって欲しい。  

 始まります。


――なのはさんが怪我をした――
 その知らせはあまりに突然で、久しぶりの休みを寝て過ごすのも悪くはないと、思っていた
私の気持ちを撃ち砕いた。
 また無茶をしたのではないだろうか?
 なのはさんは、辛いはずなのに笑顔で無茶をする人だからそれで怪我を……
 考えれば考えるほど、最悪な方向に思考が流れる。
 その最悪の可能性が無いことを祈りながら、私はなのはさんの所へと向かった。
 

「なのはさん! 大丈夫ですか?!」
 なのはさんの所へと辿り着いた私は、開口一番彼女の名前を呼んだ。
「て、ティアナ? 何でここに?」
「なのはさんが怪我をしたって聞いたから……」
 余程駆けつけられないような状況じゃないかぎりは、意地でも駆けつけますよ。
「それで、怪我の程度はどうなんですか?」
 詰め寄るように怪我の症状を聞く。
 あまり酷い怪我じゃなければいいんだけど。
 まぁ、一応私と会話も出来てるし最悪の状況ではないと思う。
「ちょ、ちょっとティアナ落ち着いて」
「落ち着くなんて出来ませんよ」
 他の誰でもない。なのはさんだから落ち着くなんて出来ない。
「あ、あのね、怪我っていっても大げさなものじゃないんだよ」
「嘘ですよね?」
 なのはさんの言う大げさなものじゃないは、あまり信用出来ない。
 だって、なのはさんは自分の事で出来るだけ他人に心配をかけたくないと思っているから。
 だから信用出来ない。
「う、嘘なんかじゃないよ。だって、ただ転んだだけなんだよ」
「…………え?」
 こ、転んだだけ……?
「だからちょっと転んで擦り剥いただけなの!」
「そ、そうですか……」
 なんだ、転んだだけか……いや、それでも一応怪我をした事に変わりは無いんだから安心は出来ない。
「家まで送ります」
「そこまでしてくれなくてもいいよ」
「ダメです。なのはさんは一応怪我人なんですから、私に甘えて下さい」
 そう……こんな時くらいは……
「ティアナってば少し心配し過ぎじゃない?」
「そんな事ありません」
 なのはさんに対しては、心配し過ぎなくらいがちょうどいいんです。
「う〜わたしの方がお姉さんなのに〜」
「はいはい。怪我人に年齢は関係無いですよ」
 まったく、妙な所で子供っぽいんですから。
 だから放っておけない。
 実際はそれだけじゃないけど、それでもやはりこの人を放っておくなんて私には出来ないのだろう。
 

 あなたがあなたである限り。
 そして――
 私が私である限りは。

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