『ねぇ……わたし知ってるんだよ?』
 唐突に投げかけられた台詞。この場にはワタシとマスター……なのはしか居ない。
 つまり、その台詞はワタシにかけられた言葉である。
 貴女は何を知っていると言うのですか? ワタシは何か貴女にとって不都合なことをしてしまっていたのでしょうか?

 始まります。


「知っている……とは、何のことでしょうか?」
「何って、色々なことだよ。レイジングハートがわたしのことをどれだけ想ってくれているのかってこと」
 ワタシがなのはを想う気持ち。それは何よりも優先される感情。
 彼女を守るのはワタシの役目で彼女を助けるのもワタシの役目。彼女が望み、求めた時側にいるのがワタシの存在意義。
「わたしの見ていないところで色々と迷惑をかけちゃってるよね?」
「そんなこと……」
 確かに彼女に隠れて様々なことをしたりもしていた。だが、それが苦痛というわけではない。迷惑とも思っていない。
 それどころか、なのはのために行動出来ることを誇らしく思っているくらいだ。
 何よりも――誰よりも大切な人のために動くことが出来る。それほど幸せなことは他にはない。
 ですから、ワタシは一度たりとも迷惑だとは思っていない。
「レイジングハートはわたしのために頑張ってくれている。なのに、ソレを黙っているフリなんて出来ないよ。
 感謝してるのに『ありがとう』の一言も言えないだなんて嫌だから……」
「……マスター」
「なのはだよ」
「……なのは」
「うん♪ レイジングハート今までありがとうね。そしてこれからも宜しくね。
 きっとわたしはまだレイジングハートに迷惑と心配をかけると思うけど、わたしを見捨てないでね?」
「はい。分かっています」
 なのはの言葉から間を置かずに返事をする。ワタシがなのはを見捨てるだなんてあり得ない。
 ワタシの生涯は彼女と共にあるのだ。ワタシが壊れ――消滅してしまうその時まで、貴女と共に在りたい。
 それがワタシの感情。不屈の心を満たす想い。
 ですから、貴女がワタシを見捨てない限り――ワタシは貴女の側に在り続けましょう。
「にゃははっ♪ わたしが言えた義理じゃないけど、レイジングハートもあまり無茶はしないでね?」
「……検討しておきます」
 無茶を――無理をしない。それはきっと不可能だろう。高町なのはという主を支え共に在るのなら無茶をしないといけない。
 人に言っておきながら自分が無茶をする人だから……力をセーブして守ることなんて出来ない。
 彼女が壊れることなく、夢や目標を叶えるためには壊れることも厭わなく進むしかない。
 しかし、それを後悔したりはしない。彼女の手足となって壊れるのならそれも本望だから。だから無茶をする。
「……もう。絶対に無茶をするって顔をしてるよぉ……」
「気のせいです」
「ううん。わたしは分かっているんだからね。レイジングハートのことをずっと見てきたんだから知っているんだよ」
「…………申し訳ありません」
 はぁ……ほんと、彼女には敵わない。そんな表情で見つめられてしまっては折れてしまう。
 真っすぐな瞳で見られて隠し事なんて出来はしない。それぐらいに力強い瞳だから。
「約束をしてだなんては言わないよ。でも……心の中に留めておくくらいはして欲しいかな。
 レイジングハートが壊れちゃうだなんて絶対に嫌だからね……」
「……はい。了解しました。ですがそれはなのは、貴女も同じことですからね」
「うぅ……分かってるもん」
「でしたら構いません」
「あうぅ……わたしが説教してるはずなのに、何で立場が逆転してるのぉ〜?」
「気のせいですよなのは」

 そう、全ては気のせい。ワタシが無茶をするというのも気のせい。
 ワタシはただ自分にとって必要なことをしているだけなのだから。無茶でも無理でも何でもない。
 会話の流れ上、ああは言いましたが貴女の思い違いなのですよなのは。
 ええ、ワタシはソレを知っていますから。
 ですから大丈夫ですよ。

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