ひら……ヒラリ、と舞い落ちる桜の花びら。
 一枚。また一枚と、ゆっくり舞い落ちる花びらは、何処か幻想的な空気を醸し出している。
「あの時もこんな日だったかな」
 もしかしたら人生で一番緊張したかもしれない日。
 舞い落ちる桜の中、あの人に告白をした。

 ――好きです。貴女が大好きなんです。なのはさん――

 顔を真っ赤にしながら、身体を震わせながら告白をした。
 その後なんて酷いモノで、恥ずかしさと情けなさで泣いてしまっていた。
 更に告白を受け入れて貰って、また泣いた。
 喜ばしい瞬間だけど、同時に恥ずかしい思い出でもある。
 あれから色々とあって今日、私はまたあの思い出の場所に来ている。
 そしてあの時と同じように、世界で一番大切で大好きな人を呼び出している。
 伝えるべき言葉を伝える為に。

 始まります。


「……落ち着きなさい。落ち着くのよ私」
 ドクン、ドクン、とうるさいくらいに心臓が鳴っている。
 待っているだけでこんなに緊張するなんて、その時になったらどうなってしまうのだろうか?
「気合を入れなさい。今日という日は絶対に失敗出来ないんだから!」
 パシン、と頬を叩いて気合を入れる。
 今日は凄く大切な日。ううん、大切な日になるのだ。
 今日私はなのはさんに告白をする。あの時と同じようなシチュエーションで再び告白をするのだ。
「何も難しいことを言うんじゃないし、この日の為に色々と準備をしてきたんだから……」
 なのはさんに伝えるべき言葉はシンプルなモノ。

 ――結婚をして下さい――

 たったこれだけの台詞を言えばいいのだ。そして、その台詞と共に用意をした指輪を渡す。
 これだけでいいのだ。何も難しいことではない。
 今の私は、なのはさんと初めて出会った時の私ではない。
 それに執務官になって色々と経験をしてきた。それなりに厳しい現場を踏んできた。
 だから――だから求婚をするくらい何ともないはずなのだ。
「……ダメ。心が折れそう」
 こんなことで本当に大丈夫なのだろうか?
 嫌な予想だけど、告白をした時と同じでまた泣きそうな気がするんだけど。
 いや……確実に泣くでしょうね。成長したと思っているけど、肝心な所は成長していないのだ。
「はぁ……なのはさん」
「なぁに?」
「ひゃわっ!?」
 いきなり声をかけられて情けない声を出して驚いてしまった。
 う、うぅ……今から告白をするっていうのに、いきなり情けない姿を晒すなんて最悪だ。
「それで、ティアナの用事って何かな?」
「そ、そのですね! なのはさんに言いたいことがありまして――」
 軽く落ち込んでいるけど、気持ちを切り替えないと。
 絶対に失敗をするわけにはいかないんだから、シッカリしないとね。
「言いたいこと、ね。何だかティアナに告白された時を思い出しちゃうかな。あの時もこんな感じだったし」
 なのはさんが懐かしそうな顔をしながら舞い落ちる桜の花びらを見ている。
 覚えててくれたんだ。私的には恥ずかしい告白だったけど、なのはさんも覚えててくれてたんだ。
 何だかソレが凄く嬉しい。
 うん。今の気持ちなら簡単に告白をすることが出来そうだ。
 気負ってないし、むしろ清々しい気持ちだから。今なら私の思い描いた――練習通りの告白が出来そうだ。
「なのはさん!」
「ん? 何かな」
「すぅーはぁ……」
 一度深呼吸をしてシッカリと、なのはさんの目を見やる。
 真剣な眼差しで見つめて、用意していた指輪を取り出し、なのはさんへと差し出す。
 伝えるべき言葉と共に。
「なのはさん。私と結婚をして下さい」
「ふぇ?」
「まだまだ未熟な私ですけど、貴女の側で一生を過ごし、共に隣を歩いていきたいんです」
「ティアナ……」
 一言でいいと思っていたけど、勝手に言葉が次々と出てきてしまう。
 この瞬間に全てをかけるように、想い全てを伝えようとしている。
「ありがとうティアナ。凄く嬉しいよ」
 目元に僅かに涙を浮かべながら、なのはさんが優しい笑みを浮かべている。
「うん。わたしでいいのなら、喜んで貴女と結婚をさせて下さい」
「――――っ」
 やった。成功した。
 あ……ダメ。もう我慢が出来ない。泣いちゃう。また泣いてしまう。
 私の予想が簡単に当たって、涙がポロポロと零れてきている。
 まぁ、泣いているのはなのはさんも同じなんだけね。

 桜の花びらが舞い落ちる中、互いに嬉し涙を流しながら抱き合う。
 また一つこの場所での思い出が追加された。
 でも、これで終わりではない。これから先、まだまだ色々な思い出が追加されていく。
 楽しい思い出だけじゃない。だけど私はきっと笑顔で前へと進んでいくだろう。
 満開に咲き誇っているこの桜達に負けないように。

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