酒の力というものは本当に恐ろしいものだ。
 酔えば普段とは違う姿を見る事が出来る。
 そう、恐ろしいまでに普段とは違う姿を――

 始まります。


「しぎゅなむさ〜ん♪」
「おわっ!? な、なのは……?」
「はい〜♪ あなたのなのはですよ♪」
 なのはが甘えるように抱きついてくる。
 そして普段とは違う甘ったるい声をあげている。
「ど、どうしたんだなのは」
 こんなにも甘えてくるのは、普段のなのはらしくはないな。
 まぁ、その……嬉しくはあるんだが……
「何でもありませんよ〜♪ ただ何となく、シグナムさんに抱きつきたかっただけですよ♪」
「そ、そうなのか……」
「そうですよ〜♪ わたしにだって甘えたい時はあるんですよ〜」
 そう可愛らしく言うなのはだが、先ほどから微かに香る匂い。
 酒の匂いがするわけなんだが……
「なのは。もしかして酔っていないか?」
「にゅふふ〜♪ 酔ってなんかいませんよ〜」
 しかし、どう見ても酔っているようにしか見えないんだがな。
「あー、シグナムさん疑ってますね!」
「あ、いや……」
 すまない。正直かなり疑っている。
「証明! 証明してあげますよ」
「ん、どうやって――――んぐっ!?」
「ん……ちゅ……」
 なのはにキスをされた。
 なのはによる証明。それはキスをして酔っていないことを証明する事だったらしい。
「ちゅぱっ……どうですかシグナムさん。全然酔ってないでしょ?」
「あ、ああ……」
 しかしだな、なのは。それで酔っていない事の証明は出来ない気がするのだが……
 それに物凄く酒の味がしていたぞ。
 やはり酔っているだろ。いや、本来調べなくても見ていれば分かっている事だった。
 こんなに行動的な、なのはは珍しい。
 それだけで普段とは違うのは容易に想像できる。
 そして酒の匂い。あぁ……やはり酔っているな。
「むむむ。シグナムさん……」
「な、何だ? なのは」
 どうして、そんなに不満そうな顔をしているんだ?
「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
 いや、だからそんな目で見られても何をすればいいのか分からないのだが。
「ふぇ〜ん」
「ええっ!? な、なのは!?」
 ど、どうして急に泣きだしたんだ?
「シグナムさんが……シグナムさんがぁ〜」
「あ、わわわわ……」
 わんわんと子供のように泣きだすなのは。
 どうすればいいんだ? どうすれば――そうだ。

 ぎゅっ。

「シグナム……さん?」
「すまないなのは。頼むから泣きやんでくれ」
 優しくなのはを抱き締め、頭を撫でる。
「……ふにゅ……」
 段々となのはの顔が緩くなってくる。
 よかった。なんとか泣き止みそうだ。
「にゅふふ〜♪ シグナムさんもっと……」
「ああ、分かった」
 何度も何度も、なのはの頭を撫でる。
「ん……気持ちいいで…………す……」
 酒が完全に回ったのか、なのはが眠りにつく。

 はぁ……まったく、大変だったな。
 色々と甘えてくる姿は可愛らしいのだが、それなりに疲れるな。
 それにしても――酒の力というのは恐いな。
 あの、なのはがこんな風になってしまうのだからな。
 まぁ、それでも――

 偶にはこんなのも悪くはないのだろうな。

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