自分の柄じゃないっていうのは理解している。
 私がこんな事をするのは滑稽なのかもしれない。
 しかし、私だって女なのだ。女だからこそ――
 彼女のために料理をしてみたいと、手料理を食べて欲しいと思ってしまう。
 あまりに似合わないのが分かっていても。

 始まります。


「な、なのは。これを食べてはもらえないだろうか」
 精一杯の勇気を持ってなのはに弁当を手渡す。
「シグナムさん。これ……」
「そ、その、なのはに食べて欲しくてな」
 恥ずかしい。今すぐにでもこの場から逃げ出したい。
 しかし、なのはに自分の手料理を食べて欲しいという欲求の方が大きい。
 だから恥ずかしくとも、なのはに自作の料理を手渡す。
「シグナムさん……」
 なのはは一体どう思うだろうか? 料理を作るなんて私には似合わない行為をしているんだ。
 やはり変に思うのだろうか。
 あまり変な風には思われたくない。だけど私だって女なんだ。
 好きな人に喜んで欲しい。好きな人の意識を独占したい。
 そんな風に思ってしまう程には、私だって女の子なのだ。
「あ、あまり味には自信はないが、それでもなのはに食べて欲しいんだ」
 それでも、なのはに喜んでもらうために一生懸命勉強したんだ。
 我儘な願望――そんな事はとっくに理解している。
 でも……
「ありがとうございます。喜んで食べさせていただきますね」
「あ、ああ」  

 大丈夫だろうか……本当になのはは喜んでくれているのだろうか。
 なのはは優しいから迷惑でも、必ず喜んでくれるだろう。
 ああ。勝手に行動して勝手に心配する。
 身勝手すぎる気持ち。ただの独りよがり。
 一つ一つの行動に対してドキドキする。
 ほんと、恋する乙女みたいだな。

「ん……美味しいですよ。シグナムさん」
「ほ、ほんとか?」
「ええ。本当に美味しいですよ。それにシグナムさんの愛情がたくさん詰まっているんですよ。
美味しくないはずがないじゃないですか」
「なのは……」
 やはり、なのはは優しい。
 本音の部分はなのは本人にしか分からないが、それでも美味しいと言ってくれた。
 その言葉はやはり嬉しく思う。
 ただ美味しい。そう言ってもらえるのが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
 でもきっと、なのはに言われるから嬉しいんだろう。
 他の人に言われてもここまで嬉しくは思わないと思う。
 なのはだから。愛しい彼女だから――

 こんなにも喜ばしい。

 自分には料理なんて似合わない事は分かっている。
 だけど彼女が、なのはが喜んでくれるのなら、似合わない行為も悪くは無い。
 そんな風に思うんだ。

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