『ねぇ……クリスマスプレゼントは何が欲しい?』
 そんな質問をぶつけて返ってきた言葉は――
『何でもいいよ? アリサちゃんが用意してくれた物なら何でも……』
 ――そんな非常に困る返答を返してきた。
“何でもいい”その言葉が一番困るのに、いくら聞いても同じ言葉しか返してくれない。
 ほんと……どうすればいいのよ。

 始まります。


 クリスマス――それは恋人達にとっては、とても大切な日。
 元々の意味とは変わってきているけど、それでも好きな人と大切な人と一日を過ごすのはいいことだ。
 そしてクリスマスと言えば、やっぱりクリスマスプレゼントなんだけど……
「あーもうっ! 何で、欲しいモノを聞いても『何でもいい』としか言ってくれないのよ!?」
 もっとこう……欲しいモノなんていくらでも出てきてもいいはずなのに。
 それなのに、あの子は――なのはは同じ答えしか返してくれない。
 別にあたしのプレゼントに期待をしていないわけじゃない。それは分かっている。
 なのはは本気で、あたしからのプレゼントならどんなモノでもいいと思っているのだ。
 何をあげても喜ぶのなら、悩む必要がない。
「なんて……気楽に考えることが出来たら、どれだけいいのかしらね?」
 残念ながら、あたしはそんな考え方をすることが出来ない。
 せっかくの特別な日。こういう日はやっぱり特別なことをしたいと思ってしまう。
「だから何か、素敵なモノを贈りたいけど……」
 何をあげればいいのか分からなくて頭を悩ましているのだ。
「なのはがもう少し、モノを強請ってくれる子だったらいいのに」
 ――って、それはそれで変な感じね。
 あの子のイメージだと、側に居てくれるだけでいい。とか言いそうな感じよね。
 うん、何だか本気でそんなことを言いそうな気がするわ。
 そういう所も、なのはの魅力の一つなんだけど、やっぱり渡す方としては困ってしまう。
 ほんと、さっきから同じ所でグルグル、グルグルしている。
 思考が先に進むことなく、同じことばかり考えてしまっているわね。
「もう……いっそのこと、あたし自身をあげるとかどうかしら?」
 ……って、バカじゃないの!
 本当にバカじゃないの! あたし自身をあげるのはいいけど、それは本来のプレゼントとは違うわよ!
 きちんと何かプレゼントを渡して、そして最後にあたしを……って流れでしょ。普通は!

「……うぐっ。一旦落ち着きましょうか。思考が変な方向に進んで行ってるわ」
 このままいけば、なのはとエッチなことをしている、そんな妄想を始めてしまいそうだ。
 あ、いや違うのよ? なのはとエッチなことをするのが嫌なんじゃないわよ?
 あたしだって、なのはの身体を貪りたいと思ってるし、なのはに貪られたいって思っているわよ!
「だー! だからソッチの方向に行くのはダメなんだってば!」
 そっちじゃなくて、今はなのはに渡すプレゼントを考えないといけないの。
 エッチなことを考えるのは禁止なんだから!
「よし――もう一回、なのはに聞きましょう。たぶん同じ答えなんでしょうけど、もう一回……」
 携帯を取り出してなのはに電話をする。
 これでもし、同じ答えだったら大人しく普通のプレゼントを渡しましょう。
 ありきたりで、欲しいモノになるかは分からないけど、普通のプレゼントを……

「――もしもし、アリサちゃん?」
「ええ。なのは、あんたに聞きたいことがあるんだけど」
「もしかしてクリスマスのプレゼントのことかな?」
「……よく分かったわね」
「だって、アリサちゃん何度もわたしに聞いてきてたじゃない」
「そう……ね。それで、何度も同じ質問をしてるけど、なのはは何が欲しいの?」
 同じ答えが返ってくる。そう半ば諦めていたんだけど――
「そうだね。特別なモノなんていらないかな。普通の何でもないモノでいいよ」
「え……?」
「そして、アリサちゃんの満面の笑顔をくれたら、それでいいんだ」
「あたしの笑顔……?」
「うん。わたしはアリサちゃんが側に居てくれるだけで満足だもん。
 そして、アリサちゃんが笑顔で幸せそうにしてくれてたら、それだけで幸せなのっ♪」
 何というか、予想通りというか、予想外というか……凄く恥ずかしい。
 だけど、これであたしの方針は決まったわね。
「そう。ありがとうなのは」
「どういたしまして? かな」
「さぁ? とりあえず、プレゼントはなのはの希望に添えるようにするわ」
「うんっ♪」
 そう言って、電話を切る。
 内容云々よりも、あたしが側に居て、そして笑顔を向けている。
 なのはは、それを望んでいた。
 じゃあ、期待に応えるとしようじゃない。それとは別にプレゼントは渡すけど、それでも――
 今のあたしは晴れやかな気持ちだった。

 色々と解決してクリスマス当日―― 
「アリサちゃん。メリークリスマスだよっ♪」
「ええ。メリークリスマスなのは」
「これ、アリサちゃんへのクリスマスプレゼント」
「あちがとうなのは。コレはあたしからよ」
「にゃははっ♪ ありがとうアリサちゃん」
 あたしは、なのはに普通の在り来たりなプレゼントと、最高の笑顔をプレゼントしたのだった。

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