「奈緒の嘘吐き……」
 二人の女性が写っている写真。
 私と奈緒が仲良く腕を組んで幸せそうな顔を浮かべている写真。
 ソレに向かって愚痴を零す。
「私を置いていかないって言ってたのに」
 二人の間で交わされた約束。
 友達から恋人へと変化した時に言ってくれた台詞。
「私とずっと一緒にしてくれるって言ったのに……ッ」
 生涯を共に歩んでいこう。
 絶対に離さない。逃がしてもあげない。
 嫌だ、嫌だと言っても無理やりにでも一緒に居てあげる。
 そんなことを言ってくれたのに。
「バカ。奈緒のばかぁ。嫌い、じゃない……けど、嫌」
 何度も何度も写真に向かって愚痴と文句をぶつけていく。
 飽きることなくずっと…………

「……いや、本人が目の前に居るんだから直接文句を言ってくれないかな?」
「つーん」
「怒ってますよアピールはいいんだけど、私が死んでしまったみたいな扱いは止めてくれない?」
「だって。だって奈緒が悪いんだもん! 私を置いていくのが悪いんだもん!」
 一緒に居てくれるって言ったのに、それを裏切るのが悪いの!
「置いて行ったって、数分だけでしょ。てか、コンビニに行ってただけだからね」
「だけ、じゃないもん!」
 奈緒は簡単に、軽く言ってるけど私としてはそこまで単純で簡単な問題じゃない。
「目が覚めて側に奈緒が居なかったんだよ!? 急に一人になって取り残されたんだよ!?」
 例えそれが数分間の出来事でも私としては、地獄のような時間だった。
 不安で不安で堪らなかった。どうしていいか分からなかった。
 泣いてなかったのが奇跡と言ってもいいレベルの出来事だったのだ。
「だからと言って、私を死んだ扱いする理由にはなってないと思うんだけど」
「これは奈緒に対する仕返し、意地悪だもん!」
「……子供か」
「大人だよ!」
「知ってるわよ。身体も心も大人だってのは理解してるわよ……」
 何故か、溜息を吐いている奈緒。
 むしろ溜息を吐きたいのは私の方なのに奈緒はことの重大さを理解してるのかな?
「奈緒は――」
「あぁ、はいはい。私が悪かったわよ。勝手に出かけてごめんね」
「むぅぅ」
 抱き締められ、頭をポンポンと撫でられてしまった。
 奈緒の温もりと撫でられることで得られる快感。
 もっと文句を言ってやりたかったけど、これじゃあ言うことが出来ないよ。
「これからはちゃんと言うから許してちょうだい」
「……反省してる?」
「してる。きちんと反省してるわ」
「……じゃあ許してあげる。今回だけだからね!」
「ええ、ありがと」
「んんぅ」
 奈緒のことを許すのは今回だけ。次は絶対に許してあげない。
 だから次からは私に寂しい思いをさせたらダメだからね。
 ずっと側に居て、その温もりを感じさせてくれないとダメなんだから。
 私は兎じゃないけど、それでも寂しいと死んじゃうの。
 それを重々理解して私を甘やかしてちょうだい。

 ……ね、お願いよ?

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