「こほ……あっ、うぅ゛〜ダルい」
「風邪を引いてるんだから仕方ないでしょ。大人しく寝てなさい」
「でも、ずっと寝てるなんて暇なんだもん〜」
「暇でも、寝てないと治らないでしょ」
「むぅ〜」
 何かを言いたそうな顔で私のことを見つめる楓。
 瞳をうるうると、涙で潤ませながらお願いをするような、甘えるような視線を向けてくる。
 瞳を潤ませた状態で、熱で顔を赤く染めている楓。
 そんな顔を見たら甘やかせてしまいたくなるけど、ここは鬼にならないといけない。
「大体、楓が変な恰好で寝てるのが悪いんでしょ」
 こんな寒い時期に薄着で……いや、ほとんど裸のような状態、か。
 そんな状態で寝て風邪を引かない方がおかしい。
 今の状態は、むしろ当たり前の結果。なるべくしてなった結果に過ぎないのだ。
「好きであんな恰好、してたんじゃないもん」
「じゃあ、どういう理由であんな恰好をしてたの?」
「……分かんない。気が付いたら、あんな感じになってたの」
「分からないって……」
 それはもう、無意識の内に服を脱ぐ癖があるっていうことなの?
 楓の本質は裸族だとでもいうのだろうか。
「一応、聞くけど今はちゃんと服を着ているでしょうね」
 私が見た時はパジャマをきちんと着ていた。
 だけど、楓の発言から考えると今は裸になっているのではないか。そんなことを思ってしまう。
「…………だ、大丈夫だよ?」
「その妙な間は何? 後、何で疑問形?」
 自信があるなら、堂々と言ってくれればいいのに。
 なのに、そんな含みを持たせるような言い方をされたら気になってしまう。
 うん。決して楓の裸が見たいわけじゃない。
 もし裸だったら、風邪の治りが遅くなるから、その為に――念の為に確認をするだけなんだ。
 疚しいことなんて一切ない。むしろ優しさしか感じることが出来ないわよね?
「楓、ちょっと確認させてもらうわよ」
「あっ、だ、ダメ――ッ!?」
「ダメじゃな………………」
「あ、あうぅ……っ」
 布団を捲った先、その先には楓の裸があった。
 変な所で器用さを感じてしまうけど、上手にパジャマと下着を脱いでいたのだった。
「楓、あんた」
「ち、違うの。お布団の中が少し暑いなって思ってて、それでその……えっと――わぷっ!?」
 アタフタとしながら言い訳をしようとしている楓。
 そんな楓の言葉を遮るように、頭の方にまで布団を被せる。
 本当はきちんと服を着せたいけど、どうせまた裸になるから諦めましょうか。
「ソレはもう諦めるから、せめて大人しくしててちょうだい」
「……う゛、分かった」
 裸になるのは、身体を温かい状態にすればどうにかなる。
 だから大人しく寝て、体力を回復させていれば風邪もすぐに治るだろう。
 後は――
「楓、薬は飲んだ?」
「ノンダヨ?」
「飲んでないのね」
「はわっ!?」
 何なのかしら。コレはもうわざとやっているようにしか感じることが出来ない。
 カタコトだったし、疑問形だったしで、薬を飲んでいないことを自白しているようなモノだ。
「何で飲んでないのよ。飲んだ方が早く治るわよ?」
「だって苦いんだもん〜」
「薬だから当たり前でしょ」
 お子様用に色々と配慮したような薬もあるけど『良薬は口に苦し』って言葉もあるんだから、我慢して欲しいわね。
「楓、薬飲みなさい」
「い、嫌〜」
「はぁ。仕方ないわね」
 薬と水。それを持って私の口の中へと含む。
「え、えっ!?」
 薬と水を含んだ状態で、楓へと顔を近づけ、そしてキスをする。
「んっ!? むぐぅぅぅぅっ!?」
 キスをし、楓の口内へと薬と水を流し込んでいく。
 飲むのが嫌なら無理やり飲ませればいい。
 これなら、楓がどれだけ拒んでも飲まないということはないはずだ。
 キスをしているから吐き出すことも出来ないしね。
「んぅ、むっ……あっ、はぁ、んぅ、あっ、ぁあぁ」
 段々と楓の瞳がトロンと蕩けてきている。
 思考能力が落ちてきているようだ。
 それに、一応はシッカリと薬を飲むことも出来ているみたい。
 コクコクと喉を鳴らしながら薬と水を飲み込んでいっている。
「ぷはぁ。薬も飲んだし、後は大人しく寝ているのよ」
「はぁ、は……んぅぁ。ず、ズルいよ。こんな風に薬を飲ませるなんて」
「仕方ないでしょ。楓が飲むのを嫌がるのが悪いのよ。早く寝なさい」
「寝れるわけないよ。あんなことされて、ムラムラしてきちゃってるんだから」
 頬を上気させている楓。少しやり方を間違えたかもしれない。
 だけど、やってしまったことはもう戻らない。今の状況を受け入れるしかないのだ。
「ダメ。風邪が治ったら相手をしてあげるから、我慢しなさい」
「むぅ。意地悪」
「意地悪で結構」
 言ったでしょ? 鬼になるって。
「じゃあ約束して」
「約束?」
「うん。風邪が治ったらわたしとエッチなことしてくれるって」
「……分かったわ」
 楓に火をつけてしまったのはワタシの責任だしね。受け入れてあげるわ。
「やったぁ♪ じゃあ、頑張って治す!」
 気合いを入れる楓。
 気合い一つでどうこうなるとは思わないけど、案外なりそうだから怖いわね。
 まぁでも――
「お休みなさい。そして早く元気になるのよ」
「うん……」
 撫で撫で、と楓の頭を撫でていく。
 しおらしい、大人しい楓だとこっちも調子が出ないし、早く元気になって欲しいわね。
 元気になって、エッチなことを……ふふ。
 その時は覚悟してなさい。たくさん愛してあげるから。

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