「コタツに蜜柑。これほど、素晴らしい組み合わせは中々ないわね」
 ポカポカと温かくなって、だらけながら蜜柑を貪っていく。
 特に何かをするわけでもなく、本当にダラダラと時間を潰していく。
 無意味な感じもするけど……これがまた凄く幸せな気分なのだ。
「あややん、蜜柑取って〜」
「誰があややんよ。初めて、そんな風に呼ばれたんだけど」
「ちょっと刺激が欲しくて?」
「意味が分からないわよ……あと、はい蜜柑よ」
「わーい♪」
「私に取らせなくても、自分で取ることが出来るでしょうに……」
 特別、どちらかの方向に寄っているわけではない。平等に真ん中の位置にある。
 だから自分で取ればいいのに、この子は……
「もぐもぐ。蜜柑美味しい〜♪」
「ええ。本当に美味しいわ……ね?」
 何かが私に触れた。
 いや、正体は分かっている。
 私の目の前に居る子――夕実の足が私に触れたんだ。
「夕実……」
 何をするのよ、という意思を込めて夕実を見やる。
「えへへへ〜♪」
 楽しそうな笑みを浮かべながら、再び私に足を当ててきた。
 つん、ツンツン、と足で突いてきている。
「……これは私に勝負を挑んできていると、解釈してもいいのかしら?」
 喧嘩を売っているということで間違いないわよね?
 夕実と同じような行動をしてもいいってことなのよね?
 仕返しても――やり返しても、問題ないってことよね?
「何のこと?」
「……へぇ」
 バレているのを理解してるくせに誤魔化すつもりなんだ。
 いいわよ。あんたがそのつもりなら、私にだって考えがあるんだから。
「……」
「ひゃうっ!?」
 夕実がしてきたのと同じように、足で突いていく。
 だけど、単純に突くわけではない。足の裏を――指を上手に使って撫でたりしていく。
 くすぐったくなるような刺激。そんなモノを与えていくのだ。
「あやちゃ……んっ、んぅぁっ」
「どうしたの? 変な声が出てるわよ?」
「う、うぅ……そんな顔で言っても、あっ、あうぅぅ」
 夕実に指摘されるまでもなく、今の私は酷い顔をしていると思う。
 ニヤニヤと笑みを……少し前に夕実がしていたような顔を浮かべている。
「もう少し蜜柑を食べていたかったけど、あやちゃんがそうくるなら仕方ないよね」
「先に手を……いや、足を出してきたのは夕実の方だけどね」
「戦争。これは戦争だよ!」
「驚く程、小さくてくだらない戦争だけどね」
 争いと呼ぶのもおこがましいくらいの戦い。
 それでもあえて名前をつけるなら、炬燵戦争って所かしら?
 ……まぁ、名前なんてどうでもいいわね。
 今は、夕実との戦いに意識を向けるとしましょうか。じゃれ合いのような争いに。
「いくよっ」
「来なさい」
 そうして私達の戦いが始まるのであった。

「――はぁ、はっ、あぁ……あ、熱い。凄く暑いよぉ」
「ただでさえ、コタツの中で温かくなっているのに、あんなに動いたらねぇ?」
「あやちゃんが大人しく負けを認めていたら、ここまでいかなかったのにぃ」
「それは私の台詞よ。夕実が先に負けを認めていたらよかったのよ」
「むぅ〜」
 突きあいの応酬。ただそれだけなのに、無駄に白熱してしまった。
 身体全体が熱を持っている。服を脱いで薄着になりたいくらいに、暑くなっている。
「もうダメ。疲れたからちょっと寝る」
「今の状態で寝たら、確実に風邪を引くわよ?」
「いいもん。風邪を引いたら、あやちゃんに看病してもらうから」
「あのねぇ……」
「お休み〜♪」
 私の忠告を無視して、そのまま眠りにつこうとしている。
「はぁ……仕方ないんだから」
 溜息を吐くけど、本気で嫌がっているわけじゃない。
 こうして意味もなく無駄な時間を過ごすのは嫌いじゃないから。
 同じ空間で、夕実と一緒に過ごす。きっとソレだけでいいから。
「戦争は終結して、和平に向かったって所なのかしらね」
 そんな呟きと共に、私と夕実との戦いは終わりを迎えた。

 その後? 勿論、夕実は風邪を引いたわ。
 あんな状態で風邪を引かないわけがない。辛そうに唸っている夕実をシッカリと看病してあげたわよ。
 シッカリと……ねっ♪

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