「忍ーっ! 入るわよ……って、何やってんの?」
「何って、コタツの中に潜ってるだけだよ?」
「それは見れば分かるんだけど、何で頭の先まで潜ってんのよ」
 コタツの布団の部分から少しだけ忍の髪が出ているから、それでギリギリ判断出来た。
 全体的にコタツの中に入っていたら、何処にいるか分からなかったかもしれないわね。
「だって、寒いんだもんー」
「寒いからってあんたね……」
 いくら何でも頭の先までコタツの中に入る必要はないでしょ。
 つーか、そんな所まで入っていたら苦しくならない? 熱くて呼吸とかし辛いと思うんだけど。
「気持ちいいよー? さっちんも入る?」
「コタツの中には入らせてもらうけど、頭の先までは入らないわよ?」
「えぇー」
「てか、そろそろ顔を出してくれないかしら? このままじゃ私が一人で喋っているみたいじゃない」
 意味のない仮定だけど、第三者が今の状況を見たら私が変な人になってしまう。
 一人、コタツに向かって喋っている……うん、間違いなく変な人だ。
「それと、忍が顔を出してくれないと私が入ることが出来ないわ」
 コタツの中に人間がまるまる一人入っている。
 そんな状態で新たに別の人間が入るのは難しいだろう。
 無理じゃないけど、窮屈になるのは確実だ。それはさすがに勘弁して欲しい。
「ぶぅー。さっちんが意地悪をするー」
「むしろ意地悪なのは、忍の方でしょ」
 このままコタツの中に入ることが出来なかったら、私が寒い思いをする。
 私だって、寒い中我慢して忍の所までやって来ているんだからね。
「……」
「…………」
「……」
「……いや、何とか言いなさいよ。無言だと本格的に寂しくなるから!」
 寒いうえに、寂しくもなるなんて酷い状態だ。
「忍。顔を出してくれないとコタツのコンセント、抜くわよ?」
「――ダメぇぇぇぇぇ! それだけは絶対にダメなの!」
「やっと顔を出したわね。それじゃあ、私も入らせてもらおうかしらね」
 忍が勢いよく顔を出した所で、私もコタツの中に入っていく。
「はぁ……暖かい」
 身体が一気に温かくなっていくのが分かる。
 冷え切っていた私の身体がコタツによって温かくなっていく。
「あぅ……これじゃあ頭までコタツに入ることが出来ないよ」
「別にいいでしょ。これでやっとお互いの顔を見ながら会話をすることが出来るんだから」
「そっか。じゃあ、いいかな」
「――って、コタツから顔を出しても、グテーとしたのは変わらないのね」
 テーブルに突っ伏しながら、だらしない――締まりのない顔を浮かべている。
「だって、コタツが温かいんだもんー」
「まぁ、それは同意するわ」
 コタツが温かくて気持ちいいのは事実だからね。
 実際問題、私だって少し気を抜いたら忍のようになってしまうだろう。
 それをギリギリの所で耐えているのだ。
「所でさっちんは今日、何しにきたのー?」
「何しにって、遊ぶ約束をしてたでしょうに」
「遊ぶって外に出るの?」
「いや、そこまでは決めてなかったけど……」
 私個人としては、買い物とかに出かけるのもいいかなって思っていたんだけど……
「じゃあ、今日は部屋の中でゆっくりしよー?」
「……それは単純に忍が外に出たくないだけじゃないの?」
「そうだよー」
「……はぁ」
 否定することも、誤魔化すこともしない忍。
 ここまでハッキリと言われると逆に文句を言い辛い。
「今日は一日中ずっとコタツの中でグダグダしよー?」
 蜜柑に手を伸ばし、皮を剥いていく忍。
 どうやら忍の意思は固そうだ。蜜柑を食べながら、私にコタツから動くつもりがないと訴えてきている。
「はぁ。いいわよ。今日はコタツの中でゆっくりしましょうか」
「わーい♪」
 とりあえずは忍をコタツから出すのは不可能っぽいので、私が諦める。
 忍の言う通り、意味もなくコタツの中でグダグダと時間を潰していくとしましょうか。
 遊びに行くと言っても、結局は忍が私の隣に居てくれればいいことだしね。
 忍が隣に居て、同じ時間を過ごすことが出来る。
 それだけで十分だから。だから今日はコタツの中で忍との時間を過ごしていきましょうか。
 ぬくぬく、と……ね。

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