「ねぇ、柚さんや? 私は一つ、貴女に聞きたいことがあるんだけど?」
「何ですか? ばあさんや」
「……誰がばあさんよ、誰が。つーか、私の話の腰を折るのは止めて」
「あらら。先におじいさんが言いそうな台詞を言ったのは紗耶香さんですよ?」
「おじいさんが言いそうな台詞なら『じいさんや』って言うべきじゃないの?」
「紗耶香さんはおじいさんの方がいいですか?」
「嫌だけど……てか、おばあさんでも嫌だからね」
「ふふっ♪ 分かっていますよ」
 ニコニコと笑みを浮かべる柚。
 満面の笑みで適当なことを言ってくるから本当に話が進まない。
 いや、まぁ出だしとしては私が悪いのかもしれないけど、話の腰を折るのは止めて欲しい。
「……柚。一つ聞いていい?」
「いいですよ♪ 紗耶香さんが望むのでしたら何でもお答えしましょう。
 それそこスリーサイズから今穿いている下着も……です」
「そんなことは聞かないから安心してちょうだい」
「ちなみに今日は何も穿いていませんよ?」
「えっ!? それって――」
「嘘ですっ♪」
「…………」
 こ、この子は……ッ!
 ほんっとうに話が進まない。すぐに横道に逸れてしまう。
 凄く聞きたいことがあるのに。そこに辿り着くまでが遠い。
「柚」
「分かっています。本当は何を穿いているか言えばいいんですね?」
「下着はいいから。お願いだから私に喋らせて」
「おかしいですね。それだと、まるで私が紗耶香さんの台詞を遮っているみたいに聞こえますよ?」
「聞こえるんじゃなくてそう言ってるのよ。あと、遮ってるのは事実だから」
「まぁっ!?」
「わざとらしく驚いたフリをするんじゃないわよ」
「…………チッ」
「聞こえてるから。あんたの舌打ちシッカリと聞こえてるからね」
「それは残念ですね」
「……はぁ」
 もう何なのコレ。本当に話が進まない。
 私? 私が悪いの? 私がいちいち突っ込みを入れるのが間違っているのかしら?
 突っ込みを入れなかったら確かに本題に入ることが出来るけど、突っ込まないのもアレだし……
 う〜ん。でも、さすがに本題に入らないとダメよね。よし、言うわよ!
「柚。あんた、今自分が何処に座っているか分かっている?」
「紗耶香さんは私のことをバカにしてます? それくらい分かってますからね」
「うん。分かっているのなら、何処に座っているか言って欲しいんだけど」
「何処って、紗耶香さんの膝の上ですよ?」
「ええ。私の膝の上に座っているわね」
「はい♪ 紗耶香さんの膝の上は座り心地がよくて快適ですよ。紗耶香さんの匂いを近くで堪能することも出来ますし」
「あんた。自分が何歳か分かってるの?」
「……紗耶香さん。女性に年齢を聞くのはマナー違反ですよ? それに紗耶香さんは知っているでしょ?」
「いや、まぁ……もう言うけど、子供じゃないんだから膝の上に乗るの止めてくれないかしら?」
「何故です?」
「大人が大人の膝の上に乗るってどうよ?」
 そういうことをするのは子供とかでしょうに。
 大人同士がすることじゃないと思う。
「紗耶香さんは私に座られるの嫌ですか?」
「嫌とかじゃなくて、単純に恥ずかしいっていうか……」
 凄く恥ずかしいのだ。普通に座られているのならまだよかったかもしれない。
 だけど、対面式で――顔を合わせる形で柚は膝の上に座っている。
 しかも、スカートで跨るように座っているからチラチラと太ももが見えたりして、非常に困る。
「あらぁ? もしかして紗耶香さんはこっちが気になるんですか?」
「うぐ――っ!?」
 軽くスカートの裾を摘まんで挑発してくる柚。
 見える!? 見えそう!? 太ももの先――柚のパンツが……
「私がどのような下着を穿いているか直接確かめてみますか?」
「……ごくりっ」
「な〜んて、冗談ですよ?」
「………………し、知ってるわよ。冗談って理解してたわよ」
 ええ。期待なんてしてないわよ?
 そんなことよりも柚に降りてもらう方が先だし? 元々、それが本題だったし?
「ここではダメですけど、ベッドの上でしたら構いませんよ?」
「――――っ!?」
 柚が耳元で囁いてくる。
 身体の奥がゾクゾクとしてきて震えてしまう。
 本当に! 本当にこの子はッ!
「どうしますか? 私とエッチなこと、しますか?」
「わ、私は……」
「エッチなことをするのでしたら、膝の上から降ろすことが出来ますよ?」
 た、確かに。エッチをするのであれば膝の上から降ろすことが出来る。
 本来の目的を果たすことが出来るわね。
「まぁ、座ったままでもエッチなことは出来ますけどね♪」
「ひっ、ひゃうっ!?」
「はむ、あむ……んぅ、あむあむ。紗耶香さんの反応、可愛いですよ?」
「み、耳は……耳は止め――」
「紗耶香さんが答えを出したら止めてあげますよ♪」
「――する! エッチなことするから! ベッドで! ね?」
「そうですか。それではベッドで紗耶香さんにたっぷりと可愛がってもらうとしましょうか♪」
「うぐぐ……」
 柚は可愛がってもらう。なんて言ってるけど、絶対私にリードさせるつもりはない。
 さっきまでの会話と同じように適当にメチャクチャに掻き回していくんでしょ?
 私にペースを握らせることなく、いっぱい苛めてくるんでしょ?
 でも私にソレを止める術はない。柚の好きなようにされていく。
 本当にこの子には敵わない。敵わないけど――

「お手柔らかにお願いね」
「考えておきます♪」
 だけど、そんな関係が嫌いじゃない。
 柚に振り回される私が好きだったりする。
 ……あれ? 私ってマゾっ気があるのかしら? いや、単に柚に染められているだけよね。
 この奔放なお姫様に……ね。

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