「お、お金がない……お金がない……ッ!」
 困った。本当に困ったわね。
 給料日まで後何日あると思ってるのよ。こんなんじゃ飢え死にしちゃうじゃない。
 何とか。何とかしてお金を稼がないと。
 あまりこの手段を取るのは嫌だったけど、躊躇してる場合じゃないわね。
 このままだと本気で洒落にならない事態になり兼ねないもの。

「愛梨っ! お願いします、お金を貸して下さい!」
 一番の親友――ううん、それ以上の関係って言った方がいいかしら。
 私の一番大事な人。愛梨にお金を貸して欲しいと懇願する。
 土下座。渾身の土下座をして必死さを訴える。
「…………いきなり呼び出したと思ったら、お金の催促? 最低だよ?」
「う、うぐ……分かってる! 分かってるけど!」
 ここで引くわけにはいかない。なんとしてでも愛梨にお金を借りないといけないのだ。
「何でお金がないの? 給料が入ってから三日くらいしか経ってないよね?」
「……はい」
「はい、じゃ分からないよ? 私は理由を聞いてるの」
 怖い。土下座をしている関係上、私が見上げるような形になっているから余計に怖く感じる。
「何をしたら三日でお金が無くなるの?」
「そ、それは……」
「まさか変なことに使ってるんじゃ……」
「違うわよ。ゲームに使っただけで――」
「それも十分変な理由だからね。と、いうよりゲームにどれだけ使ってるのよ」
「給料全部……?」
「はぁ……」
 私の答えを聞いて、愛梨が呆れるような溜息を吐いた。いや、間違いなく呆れている。
「ゲームって、あり得ないでしょ」
「だって……だって、欲しいゲームが色々と重なってしまったんだもん」
 そう。不運なことに私が欲しいと思っているゲームが大量に重なってしまったのだ。
 だから私は悪くない。むしろここまで発売日を重ねてきた販売会社が悪いのだ。
「給料がなくなる程ゲームを買っても全部すること出来ないでしょうに」
「うぐぐ」
「一つが終わったら、次のを買えばいいのにバカなの?」
「はぅっ!?」
 痛い。愛梨の言葉が凄く痛い。
 何だろう。言葉で人を殺すことが出来そうなくらいに愛梨の言葉は痛い。
「もう、ゲームを売ったら?」
「そんなの出来るわけないわよ!」
 やってもないゲームを売るなんてバカな真似は出来ない。
 じゃあ他の、過去にやったゲームを売れば? そう思うかもしれないけど、それはもう終わってる。
 色々と売った状態で更にお金がないのだ。
「あのね、お金を稼ぐってのは凄く大変なことなんだよ?」
「……分かってる」
「それなのに、土下座だけでお金を借りようとしてるの?」
「……うぅ。じゃあ、何をすれば……」
 お願いをしても借りることが出来ないのなら、一体どうすればいいのだろうか?
「簡単なことだよ」
「へ……?」
「売ればいいじゃない」
「だから――」
「違うよ。売るのはゲームじゃないよ。身体だよ身体」
「だ、誰の……?」
「聞かなくても分かるよね? ここには私と雪ちゃんだけなんだよ?」
「え、えっと……」
 凄く。物凄く嫌な予感がする。何だろう。逃げないといけない。そんな警鐘が頭の中に鳴り響いている。
 とにかく――逃げないと。
「お金。欲しいんだよね?」
「う、うん……」
「だったら、自分の身体で稼ぐしかないよね?」
 ジリジリと愛梨が近づいてくる。
「ぁ……」
 追い詰められた。私の後ろには壁が。
 もう逃げ場がない。壁に――角に追い詰められてしまったんだ。
「大丈夫だよ? 別に知らない人に身体を売れって言ってるわけじゃないんだから」
 私を追い詰めた愛梨はニッコリと満面の笑顔を浮かべ――
「私に売ってくれればいいの。雪ちゃんが私の玩具になってくれればいいんだよ?」
「ぐ、具体的には……?」
「言葉で言って欲しいの? 私的には身体に直接教えてあげたいかな?」
「ひぅっ!?」
 た、頼む相手を間違ってしまったのかもしれない。
 この笑顔は拙い。愛梨のこの笑顔はダメだ。この笑顔は酷いことを考えている顔だから。
 そして、その笑顔を見て愛梨が私に何をしようとしているのか分かってしまった。
「お金……欲しい?」
「そ、それは……」
「給料日まで持つの? それともゲーム売る?」
「ぐぬぬ……っ」
 究極の選択。分かってる。ゲームを売るのがたぶん正しい選択だって。
 でも残念ながら私にはソレを選ぶことは出来ない。愛梨の提案を受け入れるしかない。
 バカだと罵ってくれてもいい。それでもコレしかないのよ!
「私に遊ばれる?」
「……はい。お願いします」
「もうっ。そんな顔しないでよ。別に意地悪なことをするわけじゃないんだよ?」
 遊ばれると言っても、暴行を受けたり酷いことをされるわけじゃない。
 いや、ある意味では酷いことを受けるってことなのかしら。
 だって。愛梨の底なしの性欲を受け入れるってことになるんだから。
「雪ちゃんは何回イッちゃうんだろうね♪」
「……お手柔らかにお願いします」
「イ・ヤ♪ 雪ちゃんを買ったのは私なんだから、私の好きにさせてもらうよ♪」
「さいですか……」
 あぁ……無事に明日を迎えることが出来るかしら?
 とにかく筋肉痛は確定でしょうね。
 せめて、気を失うようなことがなければいいんだけど……無理でしょうね。

 あぁ、お金を稼ぐってのは本当に大変なことなのね。
 でも私は負けないわ。愛梨の性欲を全て受け止めてシッカリとお金を貰うんだから!
 頑張れ。頑張れ私。ゲームのために我慢をしていくのよ……はぁ。

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