誰だって悩みを持っている。
 そう、なのはさんだって人の子なんだから当然悩んだりする。
 もしその悩みを私が解決出来たらと、思うのは我儘なのでしょうか?

 始まります。


 いつものように、なのはさんを視線で追っていたある日、一つの違和感に気がつく。
「ふぅ…………」
 なのはさんは深く溜息を吐いて、そして食事を残して食堂を出て行った。
 なのはさんが食事を残すなんて珍しい事だ。それにあの深い溜息、もしかして体調が悪いのいだろうか?
 いや、それとも誰にも言えないような悩みでも抱えているのだろうか?
 一度気になりだすと、どんどん心配になってくる。
 あの人にはあんな表情は似合わない。あの人には常に笑顔でいて欲しい。
 そう思った瞬間、私は走り出していた。

「あの、なのはさん!」
「ティアナ? どうしたの?」
「え、えっとですね……」
 何も考えず走って来たから何を言えばいいのかが全然分からない。
 いや、聞きたい事だけは分かっているのに、それをどう言えばいいのかが分からない。
「ティアナ?」
「あ、あの……少し散歩しませんか?」
「? いいけど……」
 全く意図が分からないといった表情をしながらも、一応は付いて来てくれるようだ。

 暫く意味も無く散歩は続く。私としては、なのはさんと一緒に散歩をするのは悪くは無いんだけど、
このままだと本当にただの散歩になりかねないので、意を決して質問をする。
「な、なのはさん一つ聞いてもいいですか?」
「うん? いいよ」
「なのはさんは何か悩みを抱えているんですか?」
「ふぇ?」
 もし、何か悩みを抱えているのでしたら――
「なのはさんには、フェイトさんや八神部隊長がいるから問題無いかもしれませんけど」
 その十年来の友人に相談出来ない悩みだったら――
 私に相談しても意味が無いかもしれませんけど、私はあなたを助けたいから、
 あなたの悩む姿を見たく無いから、
「何かあるのでしたら、私に相談していただけませんか?」
 言う事は言った。後はなのはさんが……
「ぷっ……」
 え……?
「あははははっ♪ ティアナそれは間違ってるよ」
「え……?」
「確かにわたしは少し悩み事があるけど、ティアナが心配するような内容じゃないよ」
 実に可笑しそうに言う。
「では、どんな悩みなんですか?」
 心配する内容では無いとはいえ気にはなる。
「う〜ん……少し恥ずかしいんだけど……」
 恥ずかしい事? 一体何なのだろうか?
「ここ最近体重が増えちゃったなぁ〜て」
「た、体重って、それだけですか?」
「それだけとは聞き捨てならないぞ。結構真剣に悩んでるんだから」
 ま、まさか体重の悩みだったとは……ああ、そういえばご飯も残してたし、そういう事なのか。
 大した……いや、女性にとっては大きな悩みなのだが、ほんとこんな悩みでよかったと思う反面、なのはさんでも
そういう事で悩んだりするという事実の方が可笑しかった。
 そうよね。なのはさんだって人の子なんだから、普通にそういう事で悩んだりするわよね。
「むっ! ティアナ今失礼な事考えてなかった?」
「い、いえ。そんな事考えてませんよ」
 なんという勘だろうか。こういう節があるから勘違いしてしまうのだろう。
「しかし、なのはさんご飯の量を減らしてダイエットをするのは、よくありませんよ」
「わ、わかってるもん」
 そう答えるなのはさんは、年相応というか実に可愛らしくて、初めは色々と心配していたけど、今はなのはさんの意外
な一面が見られてよかったと思う。
「じゃ、夕ご飯はちゃんと食べて下さいね」
「もーっ! 大丈夫だって」
 うん。やっぱり、あなたはそういう顔の方がいい。
 笑っている顔もそうやって照れながら怒る顔も、その全てが愛おしい。
 私が悩みを解決する事は出来なかったけど、それでもこんななのはさんを見れたから、それはそれでよかったと思う。
 うん。きっとそうだよね。

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