数々の出会いと痛みを越えて今の私がある。
 でも、もしこの出会いと痛みが無かったら……
 今の私はどんな人生を歩んでいたのだろうか?
 そして、君とはどうなっていたのだろうか?

 始まります。


「なぁ、なのはちゃん。もし魔法に出会わなかったら、私らはどんな大人になってたんやろうな?」
 もし、魔法とは無縁の生活を送っていたのなら――
「なのはちゃん達に出会わなかったら、一体どうなってたんやろ?」
 魔法とは関係なしになのはちゃん達と出会っていたかもしれないし、もしかしたら一生出会う事が無かった
のかもしれない。
「なのはちゃんはどう思う? もし魔法に出会わなかったら、何をしてたと思う?」
 一番初めに思いつくのは翠屋を継ぐ事なんやけど――
「う〜ん……どうなんだろうね。お店を継ぐのは選択しにはあったと思うけど、あの時のわたしは自分に何が
出来るか分からなかったし、色々と自信が無かったしね」
「そうなんか?」
「そうだよ」
 ほぉ〜それは意外というか、ちょっとした驚きやな。
 今のなのはちゃんは自信満々やし、まぁ多少は落ち込んだり弱気になっている時もあるけど、基本的に誰の
前でも凛々しい彼女からはあまり想像出来ないだろう。
「じゃ、今はどんなものになりたい?」
「今は…………」
 少しだけ考えるようなポーズをした彼女は――
「やっぱり分かんないよ」
 と、可愛らしく舌を出して答えた。
「そうか? でも色々と似合うような気もするんやけどな〜」
 基本なのはちゃんは可愛いから、どんな職業も似合うような気がする。
「そ、そうかな……?」
「それに、これはもしもの話なんやから、そんなに深く考えんでもええと思うけどな」
 そう、これはもしもの話。ifなんやから。
「もしもの話……」
「そ。もしもの話や」
 妄想するのはただやしな。
「……やっぱり嫌」
「え……?」
「わたしは、もしもの……魔法に出会わなかった話なんて嫌だよ」
「なのは……ちゃん?」
 何を言って……
「だって、魔法に出会う事が出来たから皆に会う事が出来たんだし、はやてちゃんとも仲良くなれたんだよ」
 なのはちゃんは声を張り上げて――
「確かに辛い事や悲しい事もあったけど、今こうして幸せを感じることが出来てるんだもん!」
 まるで駄々を捏ねる子供のように――
「はやてちゃんの居ない世界なんて嫌だよぉ……」
 そして、泣きだしてしまった。
「な、なのはちゃん、ごめんな」
「わ、わたしは……」
「いや、ほんまにごめんな。私は普通に想像の世界の話をしたかっただけなんよ。それなのに、なのはちゃん
を泣かせてしまってごめんな」
 ただのクダラナイ話だと思っていたのに、なのはちゃんがここまで想っていたなんて思わなかったから。
 私はバカだ――
「うく……わ、わたしこそ……大人げない事言って……」
「気にせんでええよ」
「ふ、普通の……話だって……理解出来てるのに……なのに……想像したら……悲しくなってきて……」
「ええよ。そこまで私のことを想ってくれてるっちゅう事やし」
 ビックリはしたけど、それはそれで嬉しいもんやで。
「は、はやてちゃ……」
「せやったら今度は、二人の明るい未来について話し合おうか」
「うん……」
 どうせ想像するなら、明るい話の方がいい。
 それも大好きなあなたとの話なら――
 なお素晴らしい。

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