あなたの事を見るようになってから気がついた事が一つある。
 いつもは、私達の事をちゃんと見てくれているあなたですが、ふとした時にあなたは、遠い瞳で空を見ている。
 あなたは空を見ながら一体何を想っているのですか?

 始まります。


「…………」
「ぁ……」
 また、なのはさんが一人空を見ながら佇んでいる。
 ここ最近なのはさんのそういう姿をよく見かける。
 空を見ているなのはさんの瞳は、普段私達に見せてくれるのとは違って、何か悲しさを帯びている気がする。
 私の想い違いなんかじゃなくて、なのはさんは一人苦しんでいるんだと思う。
 いや、苦しいっていうのは少し違うかもしれないけど、それでも物悲しげな瞳をしているのは変わらない。
 なのはさん、あなたは今何を考えているんですか?
 私達の教導の事を考えているんですか? 
 それとも、六課が解散した後の事を考えているんですか?
 もし、私の事を考えてくれていたら……たとえどんな事でも――
 こんな事を考えてしまっている私が嫌いになる。
 なのはさんが悲しそうな表情をしているっていうのに、自分の事ばかり考えているなんて、
 あなたが知ったら、どう思いますか?
「なのはさん…………」
 どうかそんな表情はしないで下さい。
 私はそんななのはさんを見ているのはつらいです。
 なのはさんのために私が出来る事は何か無いですか?
 そんな事を考えていたせいだろうか、私は近づいてくる存在に気がつかなかった。

「何だか難しい顔をしているけど、どうしたのかな?」
「え………な、なのはさん!?」
 さっきまで、そこにいたはずなのにどうして私の目の前に?
 ずっと視界に入っていたはずなのに、気がつかなかったなんて、どれだけ深く考え事をしていたのよ?
 なのはさんに見つかるし、なのはさんの考え事の邪魔をしてしまっているし、ほんと最悪。
「何か悩み事があるなら相談に乗るよ?」
「な、悩み事なんて……」
 考えているのはあなたの事で、それに難しい顔をしていたのは、なのはさんの方ですよ。
「そう? でも、何かあったらちゃんと相談するんだよ?」
「……はい」
 私達の相談に乗ってくれる。でも……じゃぁ、なのはさんの悩みは? 誰が相談に乗るの?
「な、なのはさんは……」
「ん?」
「なのはさんは、いつも空を見ながら何を想っているんですか?」
「ふぇ……」
 ほんとは、こんな事聞くべきじゃ無いのは分かっている。でも、もう我慢が出来ない。
 あなたが想っている事、その全てを知りたい。その想いを共有したいと思うのは、我儘ですか?
「空を見ている時のなのはさんは、私達には見せる瞳とは違う眼をしています」
 その瞳はとても物悲しげで、でも何か惹きつけるものがある。
 でも、それだけではない。その瞳はどこか――
「なのはさんが何処か遠くに行ってしまう。そんな風に思ってしまうんです。あの瞳からは」
 何か決意のような物が感じられる。その時やはり遠くの存在に感じてしまう。
 確かになのはさんは、管理局のエース・オブ・エースで雲の上のような人だけど、でもこの六課で過ごした日々は
私に確かな自信と技術を与えてくれた。だから普段はそこまで遠くには感じなくなった。
 その思いは自惚れなのだろうか?
「別にわたしは何処にも行かないよ。でもそうだね……」
 ぼそりと、なのはさんは胸の内を語ってくれた。
「ただ、いつまでわたしはこの空を飛んでいられるのかなって、そう思ってたんだ……」
「あ…………」
  そうか、一度落ちてしまっているなのはさんだから、いつまでも飛んでいられないのが分かってるんだ。
 バカだ私は……なのはさんがそんな事を想っていたなんて……
「なのはさん……」
「大丈夫だよティアナ。わたしだって、まだまだ落ちるつもりは無いからね」
 なのはさんに優しく抱きしめられる。
 その優しさが苦しくて、ほんとは私が同じ行動をとれたらいいのに、
 でも今の私にはその資格は無い。まだ、あなたと同じステージに立てていないから。
 今は同じステージに立てていないけど、いつか同じステージに立てるようになった時には――

 あなたと同じ世界にいられますか?
 あなたのその見ている世界に――

inserted by FC2 system