真っ直ぐ見つめ、見つめられる。
 ワタシの顔なんて、見ていても面白味なんてないというのに。
 それでも彼女は――マスターである、なのははワタシの顔を飽きることなく見ている。
 人型になっているとはいえ、デバイスであるワタシの顔を。

 始まります。


「……」
「…………」
 なのはに見つめられて、どれくらいの時間が経ったのでしょうか。
 実際はそこまで時間が経っていないのでしょうが、見つめられているワタシとしては、随分な時間が経っている気がします。
 何か言葉を発するわけでもなく、ただただワタシの顔を見ている。
 そこに一体何の意味が――何の面白味があるというのでしょうか。
 なのはが見つめてくるから、同じようにワタシもなのはを見つめている。
 なのはと同じように、ただただ意味もなく見つめる。
 綺麗な顔立ち。初めて出会ったあの頃の面影を残しつつも、綺麗な大人の女性へと変わっていった。
 髪を伸ばし、サイドで結んでいるのも可愛くてとても似合っている。
 もう何度も何回も何年と見て来たはずの顔。それでも飽きたとは思わない。
 見れば見るほど、何か新しい発見をしてしまう。
 あぁ……きっとなのはも同じなのでしょう。ワタシの顔を見ていられるのは、きっと見飽きないから。
 ワタシが感じた気持ちと同じモノをなのはも感じているのでしょう。
 しかし、それはそれで何やら恥ずかしいモノがありますね。
 同じことをしておいて、今更な感じもしますがそれでも恥ずかしいモノは恥ずかしいのです。
「あの、なのは――」
「ん? 何かなレイジングハート」
 くい、っと小首を傾げる仕草は幼い頃から何一つ変わらない。
 なのはのチャームポイントの一つだろう。
 ……いえ、今はそんなことを言っている場合ではありませんでしたね。
 なのはに見つめてくるのを止めさせる方が大事なのですから。
「あまりワタシを見つめないで下さい。その……恥ずかしいので」
 言いながら顔を背ける。
 背けたはずなのに……なのはが回り込んできて、やはりワタシの顔を見つめる。
「恥ずかしいのは分かるけど、止めることは出来ないかな?」
「ど、どうしてですか?」
 ワタシを困らせて楽しもうとしているのでしょうか? いえ、そういうことをする人ではありませんね。
 お茶目な所はありますが、基本なのはは優しい人ですから。
「う〜んとね、レイジングハートの目が綺麗だなって思って」
「目が綺麗……ですか?」
 目が綺麗と言われてもあまりピンとくるものではありませんね。
「とても綺麗な赤色。レイジングハートの不屈の闘志を表しているような燃えるような赤。そんな目を見ているとね、勇気が湧いてくるの」
「はあ……」
 何と言いますか、とてもむず痒いモノがありますね。
 目の色――ワタシの色をそんな風に褒められたことなんてありませんでしたから、凄く変な感じです。
「吸い込まれそうで、そしてとても魅力的。レイジングハートの目はそれだけ魅力的なんだよ?」
 魅力的な目。それを言うのでしたら、なのはの目の方が魅力的だとワタシは思います。
 見る者を惹きつけるような目。強い意志を宿している瞳。
 様々な人に勇気と安心を与える。そんな意味で考えると、ワタシよりもなのはの方が――
「それに大切な――大事な人の目や顔を見るのは楽しいんだよ?」
「な――っ!?」
 なのはの言葉に顔が真っ赤になっていくのが自覚できる。
 ただでさえ恥ずかしいのに、そこに恥ずかしくて嬉しい言葉を浴びせられてしまっては、こうなってしまうだろう。
「にゃははっ♪ エレイジングハート、顔が真っ赤だよ?」
「い、言わないで下さいなのは……」
「ほんと、レイジングハートは可愛いね」
 それは貴女の方だというのに……
「だから……ね? もっとレイジングハートの目を見せて。脳裏に焼きつくほどに見せて欲しいな」
「……卑怯ですよ、なのは」
 そんな言葉を言われて断ることが出来るはずがない。
 恥ずかしいのに、見られたくないのに――ワタシはなのはに顔を向ける。
 何があっても、ワタシを忘れないために。
 そしてワタシ自身がなのはの顔を忘れないために。

 見つめるように、互いの顔を飽きることなく眺める。

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