あなたはいつも、私に頑張り過ぎだと言う。
 少しは肩の力を抜いた方がいいと……
 でもな、私からしたらあなたの方が頑張り過ぎやと思うんよ。  

 なぁ……なのはちゃん……


 夜、仕事も一段落して自分の部屋に帰ろうとしていた時に、ふとその姿が視界に入った。
 普段は新人達の教導官として、またはエースとして私の夢に付き合ってくれている彼女の姿が。
 こんな夜更けに彼女は一体何をしているのだろうか? 
 また、一人で色んな物を抱え込んで仕事をしているのだろうか?
 私は部屋に帰ろうとした足を彼女の元に向ける。
 もし手伝える事があれば手伝ってあげたいから。まぁ、それを直接彼女に言ってもやんわりと拒否されるんやろうけどね。
 苦笑いを浮かべつつ彼女の側に行くと――
「すぅ……すぅ……」
 可愛らしい寝息をたてながら寝ていた。
 普段見せる凛々しい表情とは違って、寝ている時の彼女の表情はとても幼く見える。
「まったく、なのはちゃんは……」
 何もこんな所で寝なくてもと思い辺りを見ると、案の定周りには仕事の書類が並んでいた。
 こんな時間まで仕事をしていたのかと思うと、考えるものがあるが、それは私も同じなので強く言う事が出来ない。
 それにしても、このままここで寝かせとくわけにもいかんな。
「なのはちゃん、なのはちゃん。こんな所で寝たら風邪引いてまうよ」
 優しく、そっと彼女を起こすように声をかける。
「う……ん…………」
「なのはちゃん、このまま寝てたら胸揉むで」
「うん……」
 寝言だろうか? 曖昧な返事をする。
 ん……? 寝言とはいえ、一応なのはちゃんも了承した事やし、なのはちゃんの胸を揉んでもええんかな?
 一瞬邪な考えが脳裏を過るが、すぐにその考えをうち消す。
「あ、あかん……何アホな事考えてんねん」
 いくらなのはちゃんの胸を揉める機会があまり無いとはいえ、こんなやり方はあかんな。
 私にも美学ちゅーもんがあるからな。
「とと、話が脱線してもうた。なのはちゃん、ほんまに起きて」
 今度は少し強く身体を揺する。
「ん……はやてちゃ……ダメ……」
 え、何がダメなん……? もしかして、なのはちゃんの夢の中で私が凄い事をしているんとちゃうか?
 彼女の夢の内容が気になり、耳を澄まして寝言を聞く。
「ダメ……はやてちゃん……ダメ……なの」
 な、なのはちゃん……
「はやてちゃん……仕事のしすぎはダメ……もう少し……」
「なのはちゃん……」
 なんや、夢の中でも私の心配をしてたんか。それにしても――
「はぁ……」
 何か自分がとてもアホらしいわ。少しの単語から厭らしい夢かと思って期待してしまっていた自分を殴りたいわ。
 こんなにも私の事を心配してくれているのに、私ときたら――

「よしっ」
 軽く自分に気合を入れて、寝ているなのはちゃんを抱き起こす。
 王子様ってガラじゃないけど、こんな時くらいはいいよね?
 ゆっくりと、起こさないように彼女を運ぶ。
「なぁ、なのはちゃん……私はな――」
 彼女にこの言葉が届かないのは分かっている。でもだからこそ言いたい。
「なのはちゃんが私の事をよく見てくれているのは分かってる。でもな、私かてなのはちゃんの事を見てるんやで。もしかしたら
なのはちゃん以上に心配もしているかもしれん。そして、誰よりもなのはちゃんの事愛してるんや」
 この気持ち、この想いは誰にも負けない。負けるつもりは無い。
「だから、なのはちゃん――」
 私ほどやなくてもいい。だけど、私の事を想ってくれるその気持ち、その気持ちだけは――

「おやすみ。なのはちゃん」
 なのはちゃんを無事ベッドまで運び、一言おやすみと言って部屋を出る。
「ありがと……はやてちゃん……」
「え……?」
 予想外の言葉が聞こえ、すぐに彼女の方に振り向く。
「すぅ……すぅ……」
 しかし、彼女は寝たままで……
「なんや、寝言かいな」
 それでも、お礼を言われたのは正直嬉しく思う。
 彼女を送り届けた私は、少し浮ついた気持ちのまま自分の部屋へと帰って行った。
 彼女の事を想いながら――

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