『シグナムさんはメイド服とかには興味は無いんですか?』
 あまりに急すぎて意味の分からない質問をなのはがしてきた。
 メイド服に興味だと? そんな物に私は…………

 始まります。


「それで、シグナムさん的にはメイド服ってどうなんですか?」
「いや、どうと言われても困るんだが」
 その質問に対して一体どう答えればいいのか分からない。
 仮にそういう服を着ないのかという趣旨の質問であるのならば、答えは一つだ。
“そんな服を着るつもりは無い”
 そもそも私にはそんな服は似合わないし、恥ずかしいからな。
「シグナムさんはメイド服が物凄く似合うような気がするんですよね♪」
 メイド服を着ている私を想像でもしているのか、物凄く嬉しそうな表情をしている。
「はやてちゃんとかにメイド服を着て欲しいとか言われた事ないですか?」
「言われた事は……ある。が」
 主はやての場合は似合うとか似合わないとかではなく、面白いかどうかで判断をしている
ような気がする。
「じゃぁ、着てみましょう♪」
「いや、それは……」
 今の話の流れでメイド服を着るのはおかしいのではないだろうか?
「何で着てくれないんですか?」
「それは……」
 恥ずかしいからに決まっているではないか。むしろ、それ以外に理由は……
 考える程あるが、今はとにかく着たくはないのだ。
「わたしのお願いでもダメですか?」
「だ……ダメだ」
 なのはのお願いは出来る事なら叶えてあげたいが、今回だけは叶える事は出来ない。
「む〜でしたら上官命令です! シグナムさん。メイド服を着なさい!」
「な――っ!?」
 それは卑怯ではないだろうか。今ここで命令というのはズルイ。
「ほら命令なんですから、早く着替えて下さい」
「……くっ」
 最近なのはが主はやてに段々と似てきたような気がする。
 少し前のなのはなら一生懸命お願いをするだけのはずだったのに、こういう卑怯な手段を
取るようになったのは、恐らく主はやてのせいだろう。
 何故ならなのはの笑顔の後ろには、薄っすらと主はやての笑顔が見えるような気がするから。
「シグナムさん……メイド服。着てくれますよね?」
「…………ああ」
 これ以上は何を言っても無駄だと悟り、大人しくメイド服を着る事にする。
 はぁ……どうして、こんな事になった? 

「わぁーっ! シグナムさん可愛いですよ!」
 大きいリアクションでなのはが喜ぶ。
 つい先ほどまでメイド服を着るのは嫌だったのに、なのはの笑顔を見るとそんな事はどうでも
よくなってしまうから不思議だ。
「ほんと、シグナムさんはメイド服が似合いますね♪」
 その褒め言葉はあまり嬉しくはないな。と、いうか恥ずかしいだけだ。
「も、もう着替えてもいよな?」
「ダメですよ? だってシグナムさんの可愛い姿をたくさん写真に撮らないといけないんですから♪」
「しゃ、写真にだと!?」
 そんな話は聞いてないぞ! こんな恥ずかしい恰好を写真に撮るなんて出来るはずがない。
「大丈夫ですよ。誰にも見せたりはしませんから」
「いや、そういう問題では……」
「上官命令だって言いませんでしたか?」
「―――――っ!?」
 瞬間なのはの周りの空気が冷たくなる。
 顔は笑っているが周りの空気が怖すぎる。
 これは絶対に逆らってはいけない。
 そんな気分になってしまう。こんな気持ちは初めてだ。
「い・い・で・す・よ・ね?」
「…………はい」
 もう大人しくなのはの言う事を聞こう。
 それが一番いい方法だと思う。
 それがメイドの心意気ではないだろうか?(別にメイドになったつもりは無いが)
 しかし、今の私はメイド服を着ているしな……そういう事にしておこうと思う。
 それ以上はもう考えたくはない。
 そう。それでいいんだ。なのはの笑顔が見られるなら私は――

 メイドになりきろう。

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