チクチクチク……チク、チク……
「…………っ!?」
 また針が指に刺さった。指に針が刺さるのは何度目だろう?
「さっきから指に刺さるばかりで、全然先に進めないよ」
 あまり時間がないのに、こんなところで躓いている場合じゃないよ。
 早く……早く、これを完成させないと――あの日が来てしまう。
 クリスマスという大切な日が。

 始まります。


「ちゃんと計画を立てて作り始めたはずなんだけど……」
 現実は立てた予定より随分遅れている。なのはママとかにも助けてもらっているのに、
この有様だよ。
 クリスマスまでにはきちんと完成させておきたいのに。これだけじゃなくて、他にも
色々な物を用意したいのに、もたついているから他の準備が出来ない。
「こんなにも編み物が難しいだなんて聞いてないよ、もーっ!」
 さっきからチクチク私の指に刺さって、なんなのよもーっ!? 何回も針が指に刺さる
から指が絆創膏だらけだし、しかもアインハルトさんにまで心配されるし。
 アインハルトさんに絆創膏の理由を聞かれても曖昧にしか答えられないから、変な空気になるし、
もう何もかも嫌になるよ。
「でも……このマフラーを渡したらアインハルトさん、きっと喜んでくれるよね?」
 アインハルトさんが私の作ったマフラーをつけてくれる。しかも、温かさそうに頬を緩めながら――
「あぁん♪ 温かさそうに頬を緩めるアインハルトさん可愛いよぉ♪」
 凛々しいのに、とても可愛いアインハルトさん。あぁん、もう素敵すぎるよ!
「ヴィヴィオが、フェイトちゃんみたいになってきてるよ」
「――なっ、なのはママっ!?」
 い、いつの間に後ろに立ってたの!? しかも何気に変な事を言われた気がするし。
「あまりフェイトちゃんっぽいことしてたら、アインハルトちゃんもビックリするよ?」
「うぐ……っ」
 確かに、フェイトママみたいに暴走してたら、アインハルトさんが驚いてしまうかもしれない。
 フェイトママの暴走っぷりは傍からみてても凄いもんね。
「まぁ、でもそれくらいアインハルトちゃんが好きってことなんだね」
「う、うん……」
 私、アインハルトさんが大好き。言葉で言い表せないくらい好きなの。
「ふふ、だったら早くそれを完成させないとだね♪」
「うんっ!」
 気合いを入れ、編み物の続きを始める。まだクリスマスにはなっていないんだ。間に合わないかも
しれないけど、まだ終わったわけじゃない。
 頑張って完成させてあげるんだから!
 ぜ〜たいに諦めないんだからね!

 ――そしてクリスマス当日。
「あ、あの……アインハルトさん。これ、クリスマスプレゼントです」
「クリスマスプレゼント……ですか」
「は、はい。気にいってもらえたら嬉しいんですけど……」
 なんとか当日に間に合わせることは出来たけど、少し不格好な出来になってしまった。
 でも、それでもアインハルトさんへの想いはきっちりと込めた。
「開けてもいいですか?」
「は、はい!」
 丁寧にラッピングされた袋を開けるアインハルトさん。そして袋の中から出たのは手作りのマフラー。
「マフラーですか」
「はい。少し不格好ですけど一生懸命作りました」
「手作りですか……なるほど、それで指が絆創膏まみれになっていたんですね」
「え、えへへ……」
 事実なんだけど、こうして改めて言葉にされると恥ずかしい感じがする。
「ありがとうございますヴィヴィオさん。早速、つけてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
「……ん、温かいですね」
 あぁ、アインハルトさんが嬉しそうな顔をしている。あまりよくない出来のマフラーなのに、
あんなにも喜んでくれている。
 やっぱり頑張って作ったかいがあったよ。
「せっかくヴィヴィオさんがプレゼントをくれたというのに、私は何も用意してなくてごめんなさい」
「あ、いえ、いいんですよ」
 これは私が勝手にしたことだし、アインハルトさんにお返しをして欲しくて作ったわけじゃ――
「今すぐ……とは無理なので、今度互いの都合のつく日に買い物に行きませんか?
 そこでヴィヴィオさんへのお返しを用意したいと思うのですが」
「そ、そんなお返しだなんて――」
「いえ、これは私の勝手な我儘ですので、諦めてください」
 二コリと微笑むアインハルトさん。うぅ……そんな風に言われたら何も言えなくなるよ。
「いいですよね?」
「はい……」

 申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、アインハルトさんとお買い物が出来るなんて、頑張って
マフラーを作って本当によかったよ。
 あぁ、今度のお買い物、すっごく楽しみだなぁ♪

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