ぎしり。ふと、身体に重みを感じる。
 ベッドが軋む音と僅かに感じる重み。
 深い眠りについていたと言っても、変化が起きれば目が覚めてしまう。
 グッスリと眠り続けることが出来れば――朝まで安眠することが出来ればいいのだろうが……
 何処までいっても私は騎士なのだ。
 僅かでも変化が起きれば目が覚めてしまう。
 例え、相手に悪意がないとしてもやはり目が覚めてしまうのだ。

 始まります。


「あ……起きてしましましたか」
「どうしたんだ、なのは」
 ベッドの上で――私に覆いかぶさるようにして、目の前になのはがいる。
 何かしらの用があって、このようなことをしているとは思うのだが……何があるのだろうか?
「特に大した用ではないのですが……」
 少しばかり言い辛そうに顔を俯ける。
「私となのはの仲だ。気軽に言ってくれていい」
 なのはが何を思っているのか、考えているのかは分からないが、別段遠慮する仲ではない。
 それなりに長い時を一緒に過ごしてきている。
 言葉として発するのは少しばかり恥ずかしいが、私達は恋人同士なのだから。
 思い込み過ぎだが、何か思い悩んでいるのであれば解決してやりたいと思うのだから。
「……シグナムさんは真面目ですね」
「お前には敵わないと思うがな」
 なのはも大概真面目な方だと思う。
 いや、仕事に対して真摯とでも言えばいいのか、人のことを言えないくらいには真面目なのだ。
「じゃあ、本当に言ってもいいですか?」
「あぁ、遠慮することはない」
「聞いた後で後悔しませんか?」
「後悔なんてすることはない」
 後悔をするような生き方はしていないし、それくらいのことで後悔なんてするはずもない。
 だから遠慮せずに言ってくれてもいいのだ。
「……ふふふ」
「……?」
「言いましたね? シグナムさん、言ってしまいましたね」
 なのはが、何やら含みのある笑みを浮かべ始める。
 何となく、嫌な予感のする。そんな笑みを浮かべているのだ。
 後悔をしない――先ほどそんな言葉を述べたばかりだが、私は後悔をし始めている。
 言ってはいけない言葉。間違いなく私はそんな言葉を言ってしまったのだと思うのだ。
「なの――」
「シグナムさんも起きてしまったことですし、今日はもう寝かせませんよ♪」
「お、おい……」
「シグナムさんの寝顔を見るだけで我慢をしようかと思ってましたけど、許可も得ましたし楽しみましょうか♪」
「その――すまないが……」
「ダメですよ。一度言った言葉を戻すことは出来ませんよ」
 ニンマリと邪悪な笑みを浮かべているなのは。
 あぁ、これはもうどうしようもない。
 今からどうにかすることなんて出来ない。逃げることも何も出来ない。
「さぁ、頑張りましょうかっ♪」
「ひ、ひぅ……」
「シグナムさん、大好きですよっ」
 私が覚えているのは、その最後の笑顔までだった。
 後は気が付いたら昼になっていた。記憶が飛んでしまっている。

 ただ一つ言えることは言葉はきちんと考えて発しないといけないということだ。
 後悔しないと思っていても、簡単に後悔するものなのだ。
 相手との仲とか関係なしに思考を止めてはいけない。
 それを今回の教訓としておこう。
 我儘を言うのであれば、僅かな変化で目が覚めないようになりたいといった所か。

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