「……むっ。少し冷えるな」
 夏も終わり、季節は秋へと移り変わっていく。
 完全に涼しくなってきたわけではないが、それでもこうして寒さを覚えたりはする。
 季節の変わり目は風邪を引きやすいというが、なるほど体温の調節が難しい。
 季節の変化が初めてではないが、それでもこうやって季節が変わる度に同じようなことを思ってしまう。
 私が風邪を引く、というのはないが私の隣に居る――側に居てくれて一緒に歩いてくれる彼女は違う。
 色々と無茶をする奴だからな。私がシッカリと管理をしておきたいのだが……如何せん難しい。
 そもそも私はそういうタイプじゃないんだが……こういう変化も彼女の――なのはのせい、なのだろうか?
 まぁ、そんな私は案外嫌いじゃなかったりするんだけどな。

 始まります。


「なのは。お前は寒くないか?」
「う〜ん……大丈夫ですよ?」
「本当か? あまりお前の言葉は信用出来ないからな」
「むぅ……それって、わたしが嘘吐きだって言いたいんですか?」
「いや、そういうわけではない。普段のなのはの言葉は信用出来るが、ちょっとしたことでは……な」
 普段からなのはが嘘を吐いているわけではない。むしろ正直者。バカ正直と言った方がいい。
 だが、なのは自身のことになるとソレは別だ。
 なのはは気持ちを隠す癖があるからな。
 キツイ、辛い、痛い。そういうことをギリギリまで隠そうとする。
 だから周りの奴らが過剰に心配をしてやる必要があるのだ。
 私自身、少し冷えるくらいで心配するのは過剰だというのは重々理解している。
 それでも、なのはが心配なのだ。風邪を引いたり怪我をしたりするのが嫌だから私は心配をする。
「そんな心配されるほど子供じゃないんですけど……」
「私からすれば十分子供だ」
 生きてきた時間を考えても十分子供だ。
「シグナムさんズルいです」
「大人はズルい生き物だからな」
「……何だか誤魔化されているような気がします」
「気のせいだろ。それよりも寒くはないか?」
 なのはの文句を受け流しながらもう一度質問をする。  なのはが寒いと思っているのであれば、何かしらの方法で温めないといけないな。
「ですから寒くは……あっ」
「どうしたんだ?」
「いえ、やっぱり寒いと思いまして♪」
「そうか。それじゃあ温め――――っ!?」
 温める方法を考えながら辺りを見回していると急になのはが私の手を握ってきた。
「ど、どうしたんだ!?」
「こうしたら温かいですよね♪」
 ぎゅぅーと手を握って満面の笑みを浮かべる。
「……」
 なるほど。確かに温かい。
 私が照れて全身が熱くなっているのではなく手の温もりを受けて温かいと思っているのだ。
「シグナムさんの手、温かいですね♪」
「……そうか。なのはの手も温かいぞ?」
「にゃははっ♪ それじゃあお互い手が温かいということで」
「そう、だな……」
 ここで無駄に論争をしても意味がないだろう。
 そんなことをするくらいならシッカリと手を握っていた方がいい。
 確実な方法ではないが、しばらくはコレでいいだろう。手を握って寒さを凌ぐ。
 季節の変わり目の気温の変化を手の温もりで過ごしていくとしよう。
 互いに離れないように手を握って。
「温かいですね〜」
「あぁ、温かいな」
 身も心を両方とも温かい。これなら風邪を引くこともないだろう。
 本当にこんなの昔の私では考えられない姿だな。
 だが、やはりそんな自分も悪くないと思っている。
 そう。季節だけではなく私自身も変わっていっているのだろう。なのはと共に……

inserted by FC2 system