子供の頃から人に迷惑をかけるのが嫌で、あまり人に甘える事をしなかった。
 そういう事があったからだろうか、今ではどう甘えればいいのかが分からない。
 彼女は私に甘えてほしいみたいやけど、一体どうすれば……

 始まります。


「ただいま……」
 今日も大量の仕事をこなして自分の部屋に帰る。
 暗闇の部屋の中誰に言うわけでも無く独り言のように挨拶をする。
「お帰りなさいませだよ。はやてちゃん♪」
「―――――――っ!?」
 何も返ってこない。そう思っていたのに、言葉が返ってくる。
 しかも何て返ってきた? お帰りなさいませ? どういうことや?
「今日もお仕事お疲れ様」
 その声の主は私に労いの言葉をかけながら近づいて来る。
 そして暗闇の中から段々とその声の主の姿が見えてくる。
「な、なのはちゃんか?」
「そうだよ、はやてちゃん」
 私に労いの言葉をかけてくれていたのは、なのはちゃんで……何で私の部屋にいるのかという疑問も
あるが、何より一番気になるのは――
「なのはちゃん、何でメイドの格好なんかしてるん?」
 メイド服。確かになのはちゃんならメイド服は似合うとは思うけど、何で今?
「お疲れのはやてちゃんを癒すためだよ」
「い、癒すため!?」
 確かに疲れてるし、なのはちゃんに癒してもらえるのは嬉しいけど、でも……
「え、遠慮するわ……」
 私を癒すって、その分なのはちゃんが疲れてしまうやんか。
 私のためになのはちゃんが疲れるなんて、そんなのは嫌や。
「もしかしてはやてちゃん、わたしに迷惑がかかるから遠慮するとか言ってるんじゃない?」
「……………」
 図星だった……私の考えはなのはちゃんに完全に読まれていた。
「はやてちゃん、何か勘違いしてるみたいだから言うけど、わたしは全然迷惑なんかしてないんだからね。好きで
やってる事だし、何よりはやてちゃんのためならキツイとか思わないもん」
「なのはちゃん……」
 で、でもな私は……
「はやてちゃんが人に甘えるのが下手なのは知ってるよ。だからわたしから甘えさせるの」
 そう言って、なのはちゃんは私を抱き締める。
「わたしは、はやてちゃんが好きだからこうして抱き締めるし、甘えてほしいの! これはわたしの勝手な我儘だし、
迷惑な事なのかもしれない。でもわたしは――」
 私への想いをぶちまけながら涙を流す。
 ああ、なのはちゃんを泣かせてしまった――絶対に彼女を泣かせたりなんかしたくなかったのに……
「ごめん、ごめんな」
 私はかける言葉が見つからず、彼女に謝り続けた。  

 暫くして、なのはちゃんは泣き止んだ。泣き止んだのはいいが、変な沈黙が流れる。
 まったく情けない。こんな時何か気の利いた言葉を言えればいいのだが、全然思いつかない。
 何か言おう。何か言おう。そんな混乱した状態だったからだろうか、勢いに任せて私は変な事を口走る。
「な、なのはちゃん! 今日一緒に寝てくれんか?」
「ふぇ?」
 え? い、今私何て……
「あ、いや……今のは違っ――」
「ふふ……いいよ」
「え……?」
「はやてちゃんのお願いならわたしは何でも聞くよ。どんな事でも……ね」
 なのはちゃんが妖しく笑みを浮かべながら、私の言葉を了承する。
「ど、どんな事でも……?」
 口が乾いてうまく声が出ない。
「たくさんベッドで癒してあげるね……」
 その言葉で一瞬にして、顔が赤くなる。

「さ、いっぱいわたしに甘えて……はやてちゃん」
 なのはちゃんに誘われるがまま、私はなのはちゃんに甘える。
 人に甘えるなんて何年ぶりだろうか?
 少し気恥ずかしいけど、甘えるのはいいものだと思った。
 それが、大好きな人なら尚更――

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