ちょっとした悪戯。それが時として大変なことになる。
 とても簡単なのに、だけどその事実にわたしは気がつかなかったのです。
 だって、だって――さすがにあんなことになるとは思わなかったんだもん!
 悪戯は計画的に。そんな教訓を得る一日でした。

 始まります。


 脱ぎかけの服に、脱ぎかけの下着。
 有体に言えば、散乱した衣服の数々。まるで何か事件があったような。そんな風に見せかける演出。
 この光景を見ればきっとあの人は――フェイトちゃんはビックリするだろう。
 オロオロと、慌てふためいてしまうフェイトちゃん。
 そんなフェイトちゃんに背後から近づいて驚かせる。
 にゃはは。きっと凄くビックリしちゃうよね。
 ちょっとした悪戯。可愛いフェイトちゃんの姿を見るための素敵な悪戯。
 それをわたしは実行中なのである。
「そろそろフェイトちゃんが帰ってくるよね?」
 チラリと時計を見やる。
 事前にフェイトちゃんに連絡を取って帰宅時間を聞いている。
 そして、今はその帰宅時間の少し前。何もなければ、そろそろ帰ってくるはず。
「この光景を見たらどんな反応をするのかな?」
 わたしの予想としては、慌てふためくと思うの。
 普段は凛々しくてシッカリしている印象のあるフェイトちゃんだけど、実はただのウッカリさんだったりする。
 だからこそ、この光景に予想外の動きをとってくれると思うんだよね。
 それが楽しみで仕方がない。

「ただいまーっ!」
 あ、フェイトちゃんが帰ってきた。
 にゃふふ、面白い反応を期待してるよフェイトちゃん♪
「なのは、ただいま。なのはー?」
 キョロキョロと辺りを見回して、わたしを探すフェイトちゃん。
 だけど隠れているから見つからない。悪戯には全力を。
 それが悪戯をする礼儀だもんね。
「何処かに行っちゃったのかな? いや、でもそんなはずは……」
 書置きもなく、何処かに行っていると思って不安そうにしているフェイトちゃん。
 その姿を見ると少しだけ罪悪感が湧いてくる。
 うぅ……ごめんねフェイトちゃん。後少しだけの辛抱だから……
 心の中でフェイトちゃんに謝りながら、観察を続ける。
「どういうことなんだろ……ん? こんな所になのはの服が……」
 ようやくフェイトちゃんが散乱してる服を見つけた。
 果てさて、どんな反応をするのだろうか?
「くんくん、まだ温かい……つまり、これはさっきまでなのはが着ていたってことだよね?」
 あぅ……まさか匂いを嗅がれるとは思わなかった。
 フェイトちゃんの言う通り、先ほどまでその服は着ていた。帰ってくる少し前に脱いだばかりなのだ。
 そんなわけで今のわたしは、実は裸だったりする。
 何で、クローゼットから服を用意しなかったんだろ?
 そんな疑問を抱くけど、今はフェイトちゃんの観察の方が先だ。
「……こっちから、なのはの匂いがする気がする」
 くんくん、と鼻を鳴らしながらだんだんと、わたしに近づいてくるフェイトちゃん。
 あれ、フェイトちゃんって犬なの!? 普通、匂いで相手の場所を見つけるとは出来ないよね!?
「うん、こっちになのはが居る……」
 本当にどんどん近づいてくるフェイトちゃん。
 わたしが、背後からフェイトちゃんを驚かしたかったのに、逆にわたしがフェイトちゃんに驚かされている。
 ――と、いうより裸の状態で見つかるのって拙くないかな?
 まぁ、それを言ったら裸のままで背後から驚かすのもおかしいんだけどね。
 やっぱり、慣れないことをするんじゃなかったかも。色々と失敗をしてるよぉ……
「なのは……なの――あ、なのはっ!?」
「あ、あははは……」
 ついにフェイトちゃんに見つかってしまった。
 裸のままの状態で見つかってしまった。
「えーと、何をしてるの?」
 やっぱりそれを聞くよね? 聞いちゃうよね!?
「え、えっとその……フェイトちゃんを驚かせようと思って悪戯を……」
「悪戯……」
 わたしの言葉を噛み砕きながら、ジロリとわたしを見てくる。
 何だか嘗め回すようなそんな見つめ方。少しだけ寒気を感じるんだけど……
「悪戯をするような子にはお仕置きが必要だと思うんだ」
「そ、そうかな……? わたしは言葉だけでいいと思うんだけど……」
 最初は言葉で。それでもダメならお仕置きだと思う。
 だから初犯のわたしには言葉だけで――
「せっかくなのはが裸になってることだし、なのはの身体にお仕置きをしちゃおうかな♪」
「ふぇ、フェイトちゃん……?」
 ジリジリとフェイトちゃんがにじり寄ってくる。
 何だか鼻息が荒いような気がするんだけど!?
「誘ってるんだよね? 裸で私を誘ってるんだよね!?」
「ち、違――っ!? これはその偶然で――」
 ちょっとだけ考えが足りなかっただけで、決して誘っているわけじゃないんだよ!?
「もう無理。いただきます♪」
「え、あ、ちょ――にゃぁああぁあぁあぁああぁああああっ!?」

 興奮してしまったフェイトちゃんに抵抗することも出来ずに、そのまま襲われてしまいました。
 慣れないことはするものじゃない。そして悪戯は計画的にしないといけない。
 そうしないと後悔することになる。
 それを身体で実感することが出来た。
 うぅ、もう悪戯なんてしないもん!

inserted by FC2 system