「うげ……っ!」
 カタカタという音と共に直視したくない現実が私に襲い掛かる。
「何で? どうして、こうなるの……?」
 あり得ない。あり得るはずがない。
 ずっとそう思っていたのに。そう願っていたのに。
 現実はとても非情で、無慈悲に私に襲い掛かってくる。
 どうにかしたいけど、すぐにどうこう出来る問題でもない。
 あぁ……何で? どうして、こんなことになったのだろうか?
 どうして――
「――体重が増えているの?」

 始まります。


「何で体重が増えてるの!? 別に太るようなことはしてないのに……」
 むしろ日々の仕事で身体を動かしているから痩せるのが正しいはずなのに。
 だというのに私の体重は前に測った時よりも増えていた。
「……待って。私の勘違いって線もあるわよね?」
 若干震え声になっているけど、可能性はゼロじゃない。
 疲れから数字を見間違えたのかもしれないし、何より体重計が壊れている可能性もある。
「そう。焦るのはまだ早いわ」
 焦るのは、全ての確認が終わってからでも遅くはない。
 遅くはない……のよ!
 …………。
 ……。

「……やっぱり現実は非情ね。泣きたいくらいに非情だわ」
 色々と調べた結果、やっぱり私の体重が増えていた。
 しかも悲しいことに、胸とかが成長したわけでもなかった。
 つまり、単純に贅肉がついて体重が増えたというわけである。
「どうしよ……こんなのがあの人にバレてしまったら……」
 あの人にバレるのは非常に拙い。何としてでも隠し通さないといけない。
 だって、あの人に――なのはさんに太ったのがバレたら嫌われてしまうかもしれない。
 嫌われて、そして捨てられる。そんなのは絶対に嫌だから!
「だから隠さないと……」
「ティアナ。何を隠すの?」
「ふぇっ!? あ、あの……な、なな、なのはさんっ!?」
「うん。なのはさんだよ?」
 あまりに急に出てくるから驚いてしまった。
 お、落ち着かないと。今の精神様態では簡単にバレてしまう。
 普段は鈍感な癖に、こういう事だけは無駄に鋭かったりするから。
「な、なのはさん。今日もいい天気ですね〜」
 ――おうふっ!? 私は何を言っているのだろうか?
 いくら何でもこんな古典的な誤魔化し方はないでしょうが!
「そうだね。ところでティアナは何を隠そうとしてたの?」
 ほらやっぱり。
 どうしよう。どうやって太ったことを誤魔化そうかしら?
 アタフタとしながら、思考を巡らせていると――
「ティアナもしかして……太ったの?」
「ふぐぅっ!?」
 分かっていることだけど、誰かに言われるのは心にくるモノがあるわね。
 とくに、なのはさんに言われるのはダメージが大きいわ。
「な、何を言っているんですか。そ、そそ、そんなわけないじゃないですか」
「ほんと?」
 じぃーと真っ直ぐで綺麗な瞳を私に向けてくる。
「嘘は吐かないでね?」
「う、うぐ……」
 真っ直ぐ見つめられながら、そんな台詞を言われたら降参するしかなくなってしまう。
「ティアナ……」
「……すみません。太りました」
 両手を上げながら降参をする。
 嫌だ。嫌われてしまうのかな? そんなのは絶対に嫌なんだけど。
「……もうっ。それくらい素直に言ってくれればいいのに」
 何処か呆れたような顔を浮かべるなのはさん。
「お、怒らないんですか? 嫌いにならないんですか?
 オズオズと聞いてみる。
「ならないよ。ティアナはわたしのこと、どう思ってるのかな?」
「そ、それは――」
「ふふ。冗談だよ♪」
 ニッコリと眩しいくらいの笑みを浮かべてくれる。
 よかった。なのはさんに嫌われないで。怒られないで。捨てられないでよかった。
「でも、太ったのならダイエットをしないとだね」
「えっと……」
「大丈夫。わたしがティアナの為に特別メニューを組んであげるからね♪」
「なのはさんの特別メニュー?」
「ビシバシといくからね♪」
「…………」
 つまりは、なのはさんの地獄の特訓が待っているということか。
 これはこれで厳しいものがあるわね。
「それと……夜も運動をしないとだよね? いっぱい可愛がってあげるよティアナ♪」
「な、なのはさ……?」
 ジリジリと距離を縮めてくるなのはさん。
 い、いや。さすがにソレはどうかと思うんですけど!
 夜の運動をした後に地獄の特訓とか、絶対に身体が持ちませんから! だから――
「ダイエット、頑張ろうねっ♪」
「……アッハイ」
 結局私は文句も拒否もすることが出来なかった。
 体重云々の前に私の身体、持つかな?
 はぁ……こんなことなら、普段からもう少し気を遣っておくんだったわ。
 もう色々と遅いけど。
「頑張ろうね!」
「お手柔らかにお願いします」
「にゃははっ♪」

 こうして私の地獄の特訓+夜の激しい、激しい運動が始まった。
 そして、この日と同時に私は二度と体調管理を怠らないと誓うのだった。

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