普段あまり我儘を言わない彼女。
 私としてはもっと我儘を言って欲しいと思っていた。
 だから、彼女が我儘を言っているのは少し嬉しいと思う事もあるのだけど、
 今回の我儘はちょっと……

 始まります。


「あ、あんな……なのはちゃん」
「なぁに? はやてちゃん」
 どうしたの? と小首を傾げるように聞いてくる。
 少しは自分がしている事を理解して欲しいと思うのだけれど、なのはちゃんには無理かなぁ……
「い、いつまで、こうして手を繋いでいるん?」
 何を思ったのか、なのはちゃんは朝からこうしてずっと私の手を握っているのだ。
 なのはちゃんに手を握ってもらえるのは嬉しいけど、このままやったら何も出来ない。
 ずっと片手が使えない状態になるのだから、仕事は勿論のこと食事も出来やしない。
 ましてや、トイレなんてどうしたらええんやろ?
 こうして私が色々と考えている間も手を握られているわけで、更には――
「もしかして、はやてちゃんは嫌なの?」
 なんて、瞳を潤ませながら聞いてくる始末だ。
 あーもうっ! なんやの? この状況は……
「はやてちゃん……」
「う……い、嫌なわけ無いやろ!」
 ただ……もう少し違うスキンシップの方がええんやけどな。
「でも、はやてちゃん……嫌そうな顔してる……」
 そ、それは――
「ほ、ほんまに嫌なわけやないんよ。ただ、このままやと色々不便やなって思ってただけよ」
「ほんと……?」
「本当やよ」
 私がなのはちゃんを拒絶するなんて事だけは、絶対にあり得ない。それだけは胸を張って言い切れる。
 まぁ、そこまで張る程胸は無いけどな。はぁ……
 でも、このままやと本当に不便な事は事実だ。なのはちゃんが、そこんところ理解してくれたら嬉しいんやけど。
「なぁ、なのはちゃん――」
「そうだ――っ!」
 折角説得しようとしたんやけど、なのはちゃんの声によって中断させられてしまった。
「わたしが手伝えばいいんだ」
「は……?」
「仕事もわたしが横で手伝って、ご飯もわたしが食べさせてあげて、トイレも一緒に行けばいいんだよ! そうすれば、
はやてちゃんとずっと一緒に居る事が出来るよ♪」
 名案と言わんばかりの表情で語るなのはちゃん。でもな……
「却下や」
「え――何で?」
 何でって、そんな分かりきった事聞くんか?
「なのはちゃんが一緒に居てくれるのは嬉しいけど、トイレに一緒に行くなんて恥ずかしすぎるやろ」
「恥ずかしいのは我慢してくれれば……」
「いやいや、大体トイレに二人で入るのはどうかと思うよ」
「で、でもでも――」
 必死に説得を試みるが、なのはちゃん本人は何とか出来ないかと思っているようだ。
 それにしても、こんなにも我儘を言うなのはちゃんは随分久しぶりやな。
 久しぶりの彼女の我儘に少しくらいは、恥ずかしいのを我慢しようかと思ったりするのだが――
 さすがにトイレまでは勘弁して欲しいと思うわ。
 なので――
「わ、分かった。トイレまではさすがに止めて欲しいけど、それ以外は手を繋いだままでええよ」
 等と甘い事を言ってみたりして……
「う、うん! ありがとうはやてちゃん♪」
 だけど、彼女の笑顔が見れたから、どうでもいいかなって思う。
 だって、久しぶりに私に甘えてくれているんだ。
 それが何だか嬉しく思うから。
 今回は私が我慢をしよう。

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