なのはママと、フェイトまま。
 二人共、私の大好きなママで、大切な人達。
 二人のママは普段から見ている私の方が恥ずかしくなるくらいの熱々っぷりだ。
 私も何時か、二人のママのような関係になれる人と出会えるのかな?
 その人とずっと仲良く一緒に居ることが出来ればいいんだけど……って、今は私のことはいいよね。
 今回は私の自慢のママ達のお話をしようと思います。
 ある一日の――恋人達にとって少しだけ特別な一日。
 そんな日の二人の日常をお送りしたいと思います。

 では、始まります。


「…………………………ッ」
「フェイトまま?」
「……ど、どうしよう」
「……?」
 物凄く神妙な面持ちでフェイトままが何か悩んでいる。
 今日はバレンタインデー。なのはママも、フェイトままも凄く楽しみにしていた日のはずなのに。
 それなのにフェイトままは、何か困っているみたい。
「フェイトまま、どうしたの?」
「ヴィヴィオ……」
 今にも泣きそうな顔を浮かべているフェイトまま。
 本当にどうしたんだろ? 普段の凛々しい……凛々、うん。凛々しいフェイトままらしくない。
「何かあったの? 私じゃどうも出来ないかもしれないけど話して欲しいな」
 子供の私がどうこう出来る問題じゃないかもしれない。
 だけど、それでも誰かに言ったら楽になると思う。
 それにもしかしたら、何か解決への道が見えてくるかもしれないから。
 あとは、フェイトままには今のような顔をして欲しくないからね。
 こんなフェイトままの顔を、なのはママが見たら心配しちゃうもんね。
「あのね」
「うん」
「…………いの」
「ごめん。フェイトまま、もう一回言って」
 言葉が小さくて上手く聞き取ることが出来なかった。
 フェイトままには悪いけど、もう一回言ってもらおう。
「……歯、がね。歯が痛いの」
「は?」
 歯? 歯が痛いって、虫歯にでもなったということだろうか?
「どうしようヴィヴィオ! こんな状態じゃ、なのはのチョコを食べることが出来ないよ!」
「あ、あうっ。く、苦しい。苦しいよフェイトまま!」
「うわぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
 私の肩を掴んで、ガクガクと激しく揺らしてくる。
 動揺してパニックになるのはいいけど、それに私を巻き込まないで欲しい。
 しかも、その理由が歯が痛くてなのはママからのチョコを食べられないからって。
 フェイトままには悪いけど、心配して損をした気分だ。
「嫌われる。このままだと、なのはに嫌われちゃうよ!」
「落ち着いてよ。なのはママは、そんなことでフェイトままのこと嫌いにならないってば」
 チョコを食べることが出来ないで嫌われるって、思考がおかしくなっている。
 いや、普段のフェイトまま的には平常運転なのかな?
 それだけ、なのはママのことを想ってるってことなんだけど……なんというか、ねぇ?
「う、うぅ……ごめん。ごめん、なのは」
「……」
 最初はどうにかしてあげたいと思っていたけど、もういいかな。
 私はフェイトままを放置することに決定した。どうせ大したことにならないしね。
 まぁ、しばらく虫歯に悪態を吐くフェイトままの姿があったけど、名誉の為に忘れてあげた方がいいよね。
 いくら何でも情けないし。

 ――なんて、ことがあって夕方。
 なのはママが帰ってきた。
「ただいまー」
「――っ!?」
 なのはママの声を聞いた瞬間、明らかにフェイトままの身体がビクンと反応した。
 怒られることに怯える子供みたいだ。
「フェイトちゃん、どうしたの?」
「あ、えっと、その……な、何でもない、よ?」
「ん?」
 不自然なくらいに挙動不審なフェイトまま。
 別に悪いことをしてるわけじゃないから堂々としていればいいのに。
「――っと、そうだ。はい、フェイトちゃん」
 そう言って、なのはママがフェイトままへと何かを渡す。
 少し大きめの箱にリボンがラッピングされている。やっぱり、あの中にはチョコが入っているんだよね?
「あ、ああ、ありがとう! なのは」
「本当にどうしたの?」
「こ、これは後で食べるね!」
 悩みに悩んで、結局食べるのを後回しにするということに決めたようだ。
 あの取り乱しようだと、勢いよく食べるかと思ったんだけどなぁ。
「う〜ん……大丈夫だよ?」
「え?」
 フェイトままの言葉を聞いて、なのはママが予想外の台詞を放つ。
「それはチョコじゃないから安心していいよ」
「チョコじゃない……の?」
「うん。だってフェイトちゃん、歯が痛いんでしょ?」
「な、何でそれを!?」
 なのはママの指摘にフェイトままが驚きの声を上げている。
 そんなフェイトままを優しい顔で見ながら――
「分かるよ。フェイトちゃんのことなら分かるんだから」
 なんて、恥ずかしい台詞を言ったのだ。
 二人より先に私の方が顔が赤くなってしまいそうだよ。
 あと、本格的にフェイトままの悩みが意味のないモノになってたね。
「チョコはフェイトちゃんの虫歯が治ってから、ね?」
「うん、うん!」
 ぱぁぁぁ、と満面の笑みを浮かべているフェイトまま。
 表情の変化が激しいけど、これでもフェイトままは凄い人なんだよ?
 まぁ、他の人達には見せることは出来ない光景だけどね。
「それじゃあ、ご飯の用意をしよっか」
「手伝うよなのは」
「ありがとうフェイトちゃん」
 二人仲良くキッチンへと向かっていく。
 バレンタインという恋人達にとっては、ちょっとだけ特別な日。
 この日も普段と同じように、二人のママは仲がいいのでした。終わりってね。

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