今日はあの人とのデートの日。
 楽しみに待っていて、待ちに待った日なのに。それなのに――
「……はぁ。何で雨なんか降るかな」
 生憎の天気となってしまった。せっかくの楽しい気分が憂鬱になってしまう。
 何で今日に限って……ほんと、酷い。

 始まります。


 しとしと、パラパラと降りしきる小さな粒。
 空から降りてくる小さな雨粒は外を暗くし、地面を濡らしていく。
「はぁ……」
 降りしきる雨を見て、つい溜息を吐いてしまう。
 今日はせっかくのデートだったのに。久しぶりに大好きな人と一緒に過ごす時間だったのに。
「こんなに大量に雨が降ってたら無理よね……」
 傘を差せば外に出ることは出来る。しかし、出来ることが限られてしまう。
 それに傘を差すということは自然と片手が使えなくなってしまうのだ。
 もう片方が空いているから手を繋ぐことは出来る。
 でもそれは、繋ぐことが出来るというだけで、繋ぎやすくもないし濡れたりしてしまう。
 まぁ、雨の日の定番として相合傘というものがあるが、それもどうかと思ってしまう。
「はぁ……」
 本日、何度目かの溜息。やっぱり今日のデートは諦めるべきなのだろうか?
 何より、こんな天気で彼女を外に出したくはない。
 いつも無理や無茶ばかりをする彼女が風邪なんかを引いたら大変だから。
 風邪を引いても引いてないと虚勢を張って無茶をするに違いない。だから出来るだけ外に出したくはない。
「一応、自宅で待機をしていますよね?」
 いるはずのない相手に向かって問いかける。
 声が聞こえるわけもないのだが、それでも問いかけずにはいられなかった。

「あはは……ごめんね? 実はもう来てたりして」
「――――っ!?」
 聞こえるはずのない返答。聞こえてはいけない声。それが聞こえてしまう。
「……なのはさんどうして」
 どうして自宅に待機していなかったのか。何故、こんな雨が降りしきる中私の家に来ているのか。
 それら諸々を問いかける。
「だって、ティアナに会いたかったんだもん」
 ぷくぅーと頬を膨らませるなのはさん。
 そんな子供じみた行為はとても可愛らしくて…………って、違う! そんなことじゃなくて――
「風邪でも引いたらどうするんですか!」
「むぅ……そんな簡単に風邪なんか引かないよ」
「で、ですけど……」
 私は心配なんです。あなたに何かあったらと思うと気が気ではなくなるんです。
「もう、ほんとティアナは心配性だね」
「……ぁ」
 ぎゅっ、と優しく抱きしめられる。
 なのはさんの温もり。温かくて、とても落ち着く。
「それに、もし仮に風邪を引いてもティアナが看病してくれるんでしょ? だったらいいかな」
 にはは、と笑うなのはさんはとても可愛らしくて、そして綺麗だった。
 敵わない。ほんとこの人には敵わない。
 言葉も温もりも、何もかもこの人には敵わないや。
「はい。きちんと看病します」
「ん、ありがと」
 撫で撫でと頭を撫でてくれる。
 はふぅ……やっぱりこの人の隣は落ち着いてしまう。
 外に出られないのは残念だったけど、こうして家の中で一緒に過ごすというのもいいものだ。
 大好きで大切な人が隣に居る。それだけで幸せになれる。それだけで楽しくなる。
「なのはさん。大好きですよ」
「うん、わたしもだよ」
 ちゅっ、と軽い口づけを交わす。
 しとしと、と雨の音を聞きながらのキス。
 それは何処かのドラマのワンシーンのようなそんな光景。
 雨なんて、憂鬱だと思っていたけど、偶には悪くはないのかな。

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